透明人間 (1954年の映画)

映画『透明人間』の概要

1954年12月29日に公開された『透明人間』（とうめいにんげん）は、東宝が制作した特撮SF[[映画]]です。この映画は、モノクロでスタンダードなスタイルの作品で、同時上映には『岩見重太郎 決戦天の橋立』がありました。この作品は、戦時中の人体実験によって自らの肉体が消されてしまった男が、透明であるがゆえに様々な困難に直面しながらも、彼の名を使って暗躍するギャング団に立ち向かう姿を描いています。

映画は、特撮技術を駆使して制作され、特に光学合成の技術が多用されています。『ゴジラ』の成功を受け、本作は東宝の空想科学映画シリーズの第2弾として位置付けられました。透明人間を主人公にしたアクションスリラーとして展開する一方で、彼が普通の人間に戻れない運命や、科学の犠牲としての側面も描かれています。物語の背景には戦争があり、透明人間の誕生の経緯が語られるものの、反戦をテーマとするものではありません。

あらすじ

物語は、銀座4丁目の交差点で、旧日本軍の特殊部隊の生き残りである秋田晴夫の轢死体が発見されるところから始まります。彼の遺書から、透明人間としての自らの境遇に苦しみ、万策尽きて自ら命を絶ったことが明らかになります。また、もう一人の透明人間が存在することも示唆され、これに伴い「透明人間」を名乗る犯人による強盗事件が増加します。

キャバレー「黒船」でピエロとして働く南条は、盲目の少女まりにオルゴールをプレゼントすると約束します。彼が透明人間の存在を捜査している新聞記者の小松と出会い、南条が実はもう一人の透明人間であることが判明します。南条は、彼の名をかたるギャング団の正体を暴くため、小松の協力を得て独自に捜査を進めます。

彼らの調査の結果、ギャング団の黒幕は「黒船」にいることが判明します。南条は支配人の矢島から歌手の美千代を救出しようと奮闘しますが、やがて捕らえられてしまいます。南条は透明な体を利用し反撃に出ますが、矢島とともに石油タンクから落下し、命を落とします。

キャラクターとキャスト

• - 南条（演：河津清三郎）
• - 美千代（演：三條美紀）
• - 矢島（演：高田稔）
• - 小松（演：土屋嘉男）
• - まり（演：近藤圭子）

制作における特撮技術

本作の特撮監督は円谷英二で、光学合成を活用することで透明人間をリアルに描写しました。観客が納得できる形で透明人間を描くために、様々な工夫が凝らされています。南条が常にピエロの格好をしている設定や透明化の表現は、円谷の独自のアイデアです。特撮の過程では、操演や特殊撮影技術が用いられ、透明人間の存在感を強調するために苦労が重ねられました。

音楽には、日本の映画音楽の先駆者である紙恭輔が起用され、映像に寄り添った職人的なスタイルで観客を惹きつけました。

影響と位置付け

『透明人間』は、以降の変身人間シリーズにおいて先駆的な役割を果たし、多くのフォロワー作品を生み出しました。特に『美女と液体人間』との類似性が指摘されています。本作は、戦後の日本映画における特撮の新たな地平を切り開く重要な作品と言えるでしょう。

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