連系線

連系線（れんけいせん）

連系線とは、互いに異なる電力系統同士を結びつけるための送電設備のことです。現代の電力供給システムにおいて、その安定性や効率性を高める上で中心的な役割を果たしています。

役割

電力系統とは、発電所、電気を送り出す変電所、そして家庭や産業で電気を使う負荷設備が、送電線や配電線を通じて一体となった巨大な電気のネットワークを指します。連系線が存在しない場合、それぞれの電力系統は、常に自らの供給力だけで需要を賄わなければなりません。

万が一、発電設備の不具合によって急に供給力が低下したり、寒波や猛暑などで電力需要が予想外に急増したりした際に、その系統内だけで供給不足に対応しようとすると、最終的には一部の需要家への電力供給を停止せざるを得なくなります。これはすなわち、停電の発生を意味します。

しかし、隣り合う電力系統との間に連系線が整備されていれば、状況は大きく変わります。ある系統で供給力が不足した場合でも、隣の系統に十分な余裕があれば、その余剰電力を連系線を通じて不足している系統へ融通してもらうことが可能です。このような電力の相互融通（応援融通とも呼ばれます）によって、系統内だけでは避けられなかった停電リスクを大幅に低減し、電力供給の信頼性（供給信頼度）を向上させることができます。

連系線は緊急時の電力融通だけでなく、日常的な電力運用の最適化にも貢献します。例えば、人口密集地から離れた場所でも、大規模で効率的な発電所を建設し、連系線を通じて遠隔地へ送電することが可能となります（電源の広域開発）。また、複数の電力系統を跨いで、その時点で発電コストが最も低い電源から優先的に稼働させる「メリットオーダー」を適用できるようになり、電力システム全体として無駄のない効率的な運用を実現できます（広域メリットオーダー）。

方式

連系線には主に二つの方式があります。

一つは、電力系統の周波数が同じ場合に用いられる「交流連系」です。これは、一般的な交流送電線によって両系統を直接接続するシンプルな方式です。

もう一つは、周波数の異なる電力系統間を結ぶ際に採用される「直流連系」です。この方式では、一方の系統の交流電力を一度直流に変換し、直流送電線や海底ケーブルで送った後、接続先の系統の周波数に合わせて再び交流に変換して供給します。また、技術的な特性（送電距離が長い場合など）や経済的な理由から、周波数が同じ系統間でも直流連系が選択されるケースがあります。

日本の地域間連系線

日本国内では、各地域（かつての電力会社の供給区域にほぼ対応）ごとに電力の送配電ネットワークを管理・運営する一般送配電事業者が存在し、それぞれの電力系統の運用を担っています。北海道から九州までの本州、四国、九州本土を含む9つの電力系統は、相互に連系線によって接続されており、広域的な電力融通が可能となっています（沖縄電力の系統は、現状本土系統とは接続されていません）。

電力広域的運営推進機関は、これらの一般送配電事業者の供給区域間を結び、常時接続されている250kV以上の電圧を持つ送電線や交直変換設備などを「地域間連系線」と呼んでいます。

連系線が持つ能力として「送電容量」がありますが、これは設備の物理的な上限値（熱容量）ではなく、電力系統全体の安定運用を考慮して設定される「運用容量」が実際の制約となります。運用容量は送電方向によって異なる値が設定されることもあります。

現在、日本の地域間連系線はさらなる増強計画が進められています。例えば、東北エリアと東京エリア間を結ぶ連系線は、（仮称）広域連系南幹線の新設（2027年11月予定）により、運用容量が423万kW増加する見込みです。また、東京エリアと中部エリア間では、新佐久間周波数変換所の新設と東清水周波数変換所の増設（いずれも2027年度予定）により、合計で90万kWの容量増が見込まれています。さらに、中部エリアと関西エリアの間でも新たな連系線の計画が進められています。

国際連系線

国境を跨いで他国の電力系統と接続する連系線は「国際連系線」と呼ばれます。

世界では古くから国際連系線が建設されており、1915年にはデンマークとスウェーデンの間に海底ケーブルが敷設され、デンマークがスウェーデンの水力発電による安価な電力を利用できるようになりました。ヨーロッパではその後も多数の国際連系線が建設され、近年では、ノルウェーからオランダへのNorNed（約580km、2008年）や、ノルウェーからイングランドへのNorth Sea Link（約720km、2021年）といった長距離の海底直流連系線が開通しています。北米においても、水力発電が盛んなカナダと米国との間に多数の連系線が存在し、電力取引が行われています。

一方、日本においては、地理的な要因などもあり、2021年時点では他国との間で電力を直接やり取りするための国際連系線は存在していません。

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