連続殺人鬼カエル男

連続殺人鬼カエル男

中山七里による推理小説『連続殺人鬼カエル男』は、サイコスリラーの要素を含む社会派ミステリーです。本作は、第8回『このミステリーがすごい!』大賞でダブルエントリーされ、他の作品とともに最終選考に残ったことで話題となりました。著者はこの小説を書く段階で、社会的なテーマを取り入れることを決意し、心神喪失者の責任能力に関する問題に挑みました。

執筆の舞台裏

著者がこの作品を執筆した背景には、かつて大阪に住んでいた際に受けた選考委員からのアドバイスがありました。かつての作品『魔女は甦る』での失敗を糧に、選考委員の評価を参考にしながらプロットを構築しました。本作には、警察署の緻密な描写が求められたため、著者は実際に警察署を訪れ、周囲を観察する中で必要な情報を得ました。その結果、リアリティのある描写を作り出しています。また、当初は「災厄の季節」というタイトルで計画されていましたが、文庫化に伴いタイトルが変更されたことも興味深い点です。

あらすじ

物語は、埼玉県飯能市のマンションで発見された全裸の女性の死体からスタートします。彼女の死体はフックに吊るされ、一見すると無邪気さを感じさせる犯行声明文が残されていました。現場に駆けつけた埼玉県捜査一課の捜査官、渡瀬と古手川は、この異常な犯罪に恐怖を感じながら、捜査を進めていきます。次第に立て続けに発生する殺人事件の背後に潜む真相が、彼らの理性と捜査能力を試すことになります。

物語が進行するにつれ、3人目、4人目の犠牲者が次々と発見される中で、捜査は困難な局面を迎えます。特に、古手川は過去の事件に関連があると思われる当真勝雄を疑い始めますが、彼の無邪気な様子に困惑しながら捜査を続行します。しかし、状況は急速に悪化し、地元市民による暴動すら引き起こされる事態に。果たして「カエル男」とは誰なのか、古手川と渡瀬は真相にたどり着くことができるのか、読者を惹きつける緊張感を持って展開していきます。

登場人物

作品には多様な登場人物が登場します。埼玉県警の若手刑事である古手川和也は、自尊心が高く、捜査を通じて自らの存在を証明しようとする一方、彼の上司である渡瀬警部は、巧みな観察眼を持ち、捜査を進める際の判断を信じています。また、精神科医の御前崎宗孝や、被害者たちの周囲にいる人々も、事件に大きな影響を与える存在となります。特に、当真勝雄という過去の罪を抱えた少年が重要な役割を果たし、物語のアクセントとなることでしょう。

メディア展開

本作はその後、ドラマ化され、関西テレビの『このミス』大賞ドラマシリーズの一環として放送されました。このドラマ版では主演に工藤阿須加、その他のキャストには多くの実力派俳優が揃いました。また、オーディオブック版も配信されるなど、幅広いメディア形式での展開が進んでいます。中山七里の作品は、読みごたえがあり、心に残るテーマを持つものであり、ミステリーファンにとって必見の一冊です。また、2018年には続編『連続殺人鬼カエル男ふたたび』も発表され、物語の続きを楽しむことができます。

このようにして、未解決の犯罪に対する深い洞察や、心の闇を描くことに成功した『連続殺人鬼カエル男』は、読者に考えさせる要素が多く含まれた作品です。

もう一度検索