連邦エンタープライズアーキテクチャ

連邦エンタープライズアーキテクチャ（FEA）とは

連邦エンタープライズアーキテクチャ（Federal Enterprise Architecture、FEA）は、アメリカ合衆国連邦政府におけるエンタープライズアーキテクチャフレームワークです。これは、連邦政府における情報技術（IT）の取得、利用、および廃棄のための共通の方法論を提供するものです。

エンタープライズアーキテクチャ（EA）は、組織の業務遂行能力を改善し、行政機関がその主要業務をより効果的に実行できるようにするための、資源調整に関するマネジメント手法です。EAは、組織の現在と将来の状態を記述し、現状から望ましい将来状態への移行計画を策定します。FEAは、これらの目標を達成する過程で重要な役割を果たします。

米国FEAは、クリンガー・コーエン法（Clinger-Cohen Act）に基づいて、米国連邦政府における情報技術調達の共通の方法論を提供するために、行政管理予算局（OMB）によって開始されました。これは、連邦機関全体で情報と資源を容易に共有し、コストを削減し、市民サービスを向上させることを目的として設計されています。

FEAの歴史

1999年9月、連邦最高情報責任者（CIO）協議会は、複数機関にまたがるシステムに対応するため、連邦機関内でのEA開発を目的とした「連邦エンタープライズアーキテクチャフレームワーク」（FEAF）バージョン1.1を発表しました。このフレームワークは、共通の事業慣行に基づき、組織の境界を越えて、米国国立標準技術研究所（NIST）の事業体構造モデルを構築しました。FEAFは、優先度の高い分野の構造記述を開発・文書化するための恒久的な基準を提供し、連邦政府における複数組織にまたがる機能セグメントの構造を記述するガイドラインを提供しました。

これらの連邦アーキテクチャセグメントがFEAを構成します。2001年には、連邦アーキテクチャワーキンググループ（FAWG）が、連邦アーキテクチャセグメントを活用し、提供するためのEA製品の開発を支援しました。FEAFは、与えられたアーキテクチャを、EA、データアーキテクチャ、アプリケーションアーキテクチャ、および技術アーキテクチャに分割します。FEAFの全体的なフレームワークは、ザックマンフレームワークの最初の3つの列と、スティーブン・スピーワックのエンタープライズアーキテクチャプランニング方法論を含みます。

FEAの参照モデル

FEAは、ITリソースを記述するための共通の分類体系と概念体系を開発するために、参照モデルの組み合わせを使用して構築されます。これらの参照モデルには、以下が含まれます。

性能参照モデル（Performance Reference Model、PRM）
事業参照モデル（Business Reference Model、BRM）
サービス／コンポーネント参照モデル（Service Component Reference Model、SRM）
データ参照モデル（Data Reference Model、DRM）
技術参照モデル（Technical Reference Model、TRM）

これらのモデルは、連邦機関全体で情報と資源を容易に共有し、コストを削減し、市民サービスを改善するために設計されています。これらは、クリンガー・コーエン法に基づいて、米国OMBで開始されました。

性能参照モデル（PRM）

性能参照モデル（PRM）は、主要なIT投資のパフォーマンスと、計画されたパフォーマンスへの貢献を測定するための標準フレームワークです。PRMは、次の3つの目的を持っています。

戦略と日常的な意思決定を改善するための、拡張されたパフォーマンス情報を生成する。
出力と成果に対する入力の整合性と明確化を改善し、望ましい結果への「可視性」を向上させる。
従来の組織や境界を越えた、パフォーマンス改善の機会を特定する。

PRMは、バランススコアカード、ボルドリッジ基準、価値測定方法論、ロジックモデル、バリューチェーン、制約理論など、既存のパフォーマンス測定アプローチを複数活用します。さらに、PRMは、プログラム評価レーティングツール（PART）評価、政府パフォーマンス成果法（GPRA）、エンタープライズアーキテクチャ、資金計画と投資管理を通じて、機関が現在測定しているものを反映します。PRMは、4つの測定領域で構成されています。

ミッションと事業成果
顧客成果
プロセスと活動
技術

事業参照モデル（BRM）

FEAにおける事業参照モデル（BRM）は、連邦政府の事業運営を、それらを実行する機関とは独立に記述するための、機能駆動型のフレームワークです。BRMは、連邦政府の日常的な事業運営を記述するために、機能駆動型のアプローチを用いて、組織化され、階層的に構築されています。BRMはFEAの最初のレイヤーであり、データ分析、サービスコンポーネント、および技術の主要な視点となります。

BRMは、以下の4つの領域に分けられます。

市民へのサービス
サービス提供形態
サービス提供の支援
政府資源の管理

事業参照モデルは、その内部運営や市民へのサービスなど、連邦政府の事業ライン（LOB）の機能的なビューを、それらを実行する機関、部局、事務所とは独立して促進する枠組みを提供します。BRMは、機関ごとの縦割りビューの代わりに、連邦政府全体で共通の事業領域を記述することで、機関の協力関係を促進し、FEAや電子政府戦略の基盤としてのサービスを促進します。

BRMは、政府運営について考えるための改善された方法を提供する一方で、それは、効果的に利用された場合にのみ、真の活用が実現できる単なるモデルです。BRMによって推進される機能的なアプローチは、EAビジネスアーキテクチャと、すべての連邦機関とOMBのプロセス管理に取り入れられない限り、電子政府の目標達成にはほとんど役立ちません。

サービス参照モデル（SRM）

サービス／コンポーネント参照モデル（SRM）は、サービス／コンポーネントが事業またはパフォーマンス目標をどのように支援するかを分類する、事業およびパフォーマンス駆動型の機能フレームワークです。SRMは、政府全体の事業およびアプリケーションサービス／コンポーネントの、IT投資および資産における発見を支援するために使用することを目的としています。SRMは、事業機能とは独立して、アプリケーション、アプリケーション機能、コンポーネント、または事業サービスの再利用を支援できる、水平および垂直のサービスドメインを横断して構造化されています。

SRMは、以下のドメインで確立されています。

顧客サービス
プロセス自動化サービス
事業管理サービス
デジタル資産サービス
事業分析サービス
バックオフィスサービス
サポートサービス

各サービスドメインは、サービスタイプに分割されます。たとえば、顧客サービスドメインは、次の3つのサービスタイプに対応します。

顧客の好み
顧客関係管理
顧客の初期サポート

そして、各サービスタイプはさらにコンポーネントに分割されます。たとえば、顧客の好みサービスタイプに含まれる4つのコンポーネントは、次のようになります。

パーソナライズ
サブスクリプション
アラートと通知
プロファイル管理

データ参照モデル（DRM）

データ参照モデル（DRM）は、政府のプログラムと事業ラインの運営をサポートするデータと情報を、包括的なレベルで記述します。このモデルにより、機関は、連邦政府と市民の間で発生するインタラクションや交換の種類を記述することができます。DRMは、詳細レベルをさらに細かく分類し、連邦データの分類を確立し、重複するデータリソースを特定します。共通のデータモデルは、連邦政府内、および政府と外部関係者間の情報交換を合理化するでしょう。

DRMのボリューム1は、構造、利用、データ識別構築の高レベルな全体像を提供します。内容は以下の通りです。

モデルの2〜4で詳細に説明されているコンテンツの紹介と高レベルの概要を提供します。
残りのボリュームの利害関係者コミュニティの開発を奨励します。
さらなる開発に使用される基本概念、戦略、構造を提供します。

DRMのデータ構造は、モデリングの標準と概念を開発するための出発点です。DRMの結合されたボリュームは、縦横のデータ分類と情報共有を支援します。

技術参照モデル（TRM）

TRMは、サービスコンポーネントおよび機能をサポートおよび有効化するための標準および技術を分類する、コンポーネント駆動型の技術フレームワークです。また、政府全体の視点から、技術およびサービスコンポーネントの再利用と標準化を推進するための基盤を提供することにより、既存の機関TRMおよび電子政府のガイダンスを統合します。

TRMは以下で構成されています。

サービスエリア：サービスコンポーネントの安全な構築、交換、および配信をサポートする技術層を表します。各サービスエリアは、標準と技術を下位の機能領域に集約します。各サービスエリアは、複数のサービスカテゴリとサービス標準で構成されています。この階層は、サービスエリアを直接サポートする標準と技術をグループ化するためのフレームワークを提供します（紫色の見出し）。
サービスカテゴリ：事業または技術機能に関して、下位レベルの技術と標準を分類します。次に、各サービスカテゴリは、1つ以上のサービス標準で構成されます（太字のグループ）。
サービス標準：サービスカテゴリをサポートする標準と技術を定義します。TRMへの機関のマッピングをサポートするために、多くのサービス標準は、例として、説明的な仕様または技術を提供します（プレーンテキスト）。

右の図は、TRMの高レベルな描写を示しています。

機関の資本投資をTRMに合わせることで、共通の標準化された用語を活用し、機関間の発見、協力、および相互運用が可能になります。機関と連邦政府は、事業機能、ミッション、およびターゲットアーキテクチャをサポートするために、最適なソリューションと技術を特定および再利用することにより、規模の経済から利益を得ることができます。階層的に編成されたTRMは、ビジネスおよびアプリケーションのサービスコンポーネントの安全な配信、交換、および構築をまとめてサポートする標準とテクノロジーを分類します。これらのコンポーネントは、コンポーネントベースまたはサービス指向アーキテクチャで使用および活用できます。

FEAのアーキテクチャレベル

FEAエンタープライズでは、セグメントアーキテクチャとソリューションアーキテクチャは、詳細レベルを変化させ、関連するが異なる懸念事項に対処することにより、異なるビジネスの視点を提供します。企業自体が階層的に組織化されているのと同様に、各タイプのアーキテクチャによって提供されるさまざまなビューも同様に階層化されています。連邦エンタープライズアーキテクチャ実践ガイダンス（2006）では、次の3種類のアーキテクチャを定義しています。

エンタープライズアーキテクチャ
セグメントアーキテクチャ
ソリューションアーキテクチャ

定義上、エンタープライズアーキテクチャ（EA）は、戦略、ビジネスプロセス、投資、データ、システム、または技術のいずれであっても、共通または共有のアセットを特定することに基本的に関心があります。EAは戦略によって推進されます。これは、機関がそのリソースが機関のミッションと戦略目標および目的に適切に適合しているかどうかを特定するのに役立ちます。投資の観点から、EAはIT投資ポートフォリオ全体に関する意思決定を促進するために使用されます。その結果、EAの主要な利害関係者は、機関が可能な限り効果的かつ効率的にその使命を果たすことを保証する任務を負った上級管理者および幹部です。

対照的に、「セグメントアーキテクチャ」は、コアミッション領域、ビジネスサービス、またはエンタープライズサービスのシンプルなロードマップを定義します。セグメントアーキテクチャは、ビジネス管理によって推進され、市民と機関スタッフへのサービス提供を改善する製品を提供します。投資の観点から、セグメントアーキテクチャは、コアミッション領域または共通サービスまたは共有サービスをサポートするビジネスケースまたはビジネスケースのグループの意思決定を促進します。セグメントアーキテクチャの主要な利害関係者は、事業主と管理者です。セグメントアーキテクチャは、次の3つの原則を通じてEAに関連付けられています。

構造：セグメントアーキテクチャは、コアミッション領域または共通サービスまたは共有サービスの特定のニーズを満たすために拡張および特殊化される場合がありますが、EAで使用されるフレームワークを継承します。
再利用：セグメントアーキテクチャは、エンタープライズレベルで定義された重要な資産を再利用します。これには、データ、共通ビジネスプロセスと投資、アプリケーションとテクノロジーが含まれます。
アラインメント：セグメントアーキテクチャは、ビジネス戦略、義務、標準、パフォーマンス指標など、エンタープライズレベルで定義された要素と連携します。

「ソリューションアーキテクチャ」は、個々の機関のビジネス機能を自動化および改善するために使用される、アプリケーションやコンポーネントなどの機関のIT資産を定義します。ソリューションアーキテクチャの範囲は通常、単一のプロジェクトに限定され、システムまたはビジネスソリューションの全部または一部を実装するために使用されます。ソリューションアーキテクチャの主要な利害関係者は、システムユーザーと開発者です。ソリューションアーキテクチャは、定義と制約を通じて、セグメントアーキテクチャおよびエンタープライズアーキテクチャに関連付けられることがよくあります。たとえば、セグメントアーキテクチャは、コアミッション領域またはサービス内で使用されるデータまたはサービスインターフェイスの定義を提供します。これらのインターフェイスには、個々のソリューションからアクセスします。同様に、ソリューションは、エンタープライズレベルで定義された特定のテクノロジーと標準に限定される場合があります。

FEAツール

いくつかのモデリングツールを使用すると、連邦エンタープライズアーキテクト参照モデルをキャプチャし、エンタープライズアーキテクチャをそれらに対して調整できます。以下にいくつかを示します。

Adaptive Inc.
Future Tech Systems, Inc.
IBM（旧Telelogic）System Architect（ソフトウェア）
Troux Technologies Architect
Iteraplan - オープンソースEAツール

CIO協議会のET.govサイトを使用して、TRMにはまだ含まれていないが、含める必要がある技術仕様（標準）を特定できます。これまでに特定されたものは、IntelligenXがホストする高度なET.gov検索サービスを使用して検出できます。

脚注

外部リンク

e-gov FEAプログラムオフィスのウェブページ
連邦エンタープライズアーキテクチャ研究所のウェブサイト
連邦最高情報責任者協議会のウェブサイト
DoD CIOエンタープライズアーキテクチャと標準

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