連邦国境警備隊

連邦国境警備隊（BGS）から連邦警察（BPOL）へ：ドイツの国境警備と警察組織の変遷

連邦国境警備隊（Bundesgrenzschutz, BGS）は、ドイツ連邦共和国（旧西ドイツおよび統一ドイツ）における重要な法執行機関でした。1951年に設立された当初は、連邦政府にとって最初の実力組織として、準軍事組織としての側面を持っていましたが、時を経て文民警察へと移行しました。

冷戦下の設立と初期の役割

BGSが創設された背景には、冷戦という時代がありました。東西ドイツ間の自由な往来が可能であった当時、密輸業者や工作員による非合法な出入国が頻発していました。連合国占領当局は、将来的な撤退を見据え、現地の地理に精通したドイツ人による警備体制の構築を決定。こうしてBGSは、軽歩兵として武装した準軍事組織として発足し、大隊、中隊、小隊といった編成が組まれました。

1960年代末には法改正が行われ、BGSは文民警察組織へと転換。交戦者状態の規定も1994年の法改正で削除され、より警察としての性格を強めていきました。

任務の拡大と組織の変容

BGSの任務は、国境警備にとどまらず、時代とともに拡大していきました。1953年には連邦旅券管理局の管轄が移管され、全ての国境線に部隊が展開。1972年には、連邦憲法裁判所、大統領、首相、外務省、内務省といった重要施設の警備も任務に加えられました。1974年からは完全な志願兵制度が導入され、1987年には女性隊員の募集も開始されました。東西ドイツ統一後の1990年には、ドイツ国内国境線の警備任務が解除されています。

1995年初頭の時点で、BGSの戦力は約24,000名。隊員は装甲車、機関銃、自動小銃、催涙ガス、手榴弾、小銃擲弾、対戦車火器などで武装していました。また、沿岸警備隊に相当する組織として、連邦海上国境警備隊も存在し、大型巡視艇やヘリコプターを装備していました。

BGSは、国境警備に加え、地方警察の管轄を超える事案への対応、空港や大使館の警備なども担当。爆薬処理などの特殊技能を持つ部隊や、ヘリコプター、戦闘車両などを運用する部隊も存在しました。

GSG-9の創設

1972年のミュンヘンオリンピック事件を契機に、対テロ作戦を専門とする特殊部隊として、第9国境警備群（GSG 9）が創設されました。1977年のルフトハンザ航空181便ハイジャック事件での活躍により、GSG 9は世界的に知られる存在となりました。

組織と階級制度

BGSは、当初連邦軍と類似した階級制度を採用していましたが、1970年代半ばに他の公務員と同様の制度に改められました。制服は警察に準じた緑色でしたが、出動服として迷彩作業服が採用され、スチール製ヘルメットも使用されていました。

鉄道警察の統合

1990年の東西ドイツ統一に伴い、東西両ドイツの鉄道警察（西ドイツ鉄道警察、東ドイツ運輸警察）の指揮権がBGSに移管され、再編が行われました。これは、広範囲に及ぶ鉄道網に対する警察権限を、地方警察では十分にカバーできないと判断されたためです。

連邦警察（BPOL）への改組

2005年7月、BGSは任務の拡大と組織の多面化を反映し、連邦警察（Bundespolizei, BPOL）へと名称を変更しました。この改組は、州ごとの法執行権限を定める憲法との関係で議論を呼びましたが、現在のBPOLはドイツにおける重要な警察組織として機能しています。

このように、連邦国境警備隊は、冷戦下の国境警備からテロ対策、鉄道警察の統合などを経て、連邦警察へと発展してきました。その歴史は、ドイツの社会情勢の変化と、それに対応するための組織改革の軌跡を物語っています。

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