連邦大統領 (スイス)

スイス連邦大統領とは

スイス連邦大統領は、スイス連邦参事会の議長を務める役職です。ドイツ語ではBundespräsident、フランス語ではPrésident de la Confédération、イタリア語ではPresidente della Confederazione、ロマンシュ語ではPresident da la Confederaziunと表記されます。

連邦大統領は、連邦議会によって毎年選出され、その任期は1月1日から12月31日までです。連邦大統領は、連邦参事会の会合の議長を務めるだけでなく、特別な代表としての任務も担います。ただし、連邦大統領は「同輩中の首席 (Primus inter pares)」であり、他の連邦参事に対して特別な権限を持っているわけではありません。また、自身の省の長としての地位も継続します。

伝統的に、連邦大統領の任務は連邦参事の中で年齢順に持ち回りで行われ、前年の副大統領が連邦大統領に選出されることが一般的です。

権能

スイス連邦大統領は、オーストリアやドイツの連邦大統領とは異なり、国家元首ではありません。スイス連邦憲法上、連邦参事会が国家元首兼政府の長として位置づけられています。

連邦大統領は、連邦参事会の議長として、参事会での採決において他の連邦参事と同等の扱いを受けます。また、連邦参事として担当する連邦省についても、連邦参事会の一員として職務を遂行するのみです。

連邦大統領が国家元首のように振る舞うのは、主に以下のような場面です。

新年と建国記念日（8月1日）のテレビ・ラジオ演説
毎年連邦院で行われる外交使節団に対する新年のレセプション（駐スイス・ローマ教皇庁大使とともにスピーチを述べる）

近年、外交の場が増えたことにより、連邦大統領がスイスの政府首脳として外国を訪問する機会が増加しています。また、国際連合総会など、他国の国家元首や政府の長が一堂に会する際にも、連邦大統領が出席します。

オリンピックの開会式では、国家元首が開会宣言を行うことになっていますが、過去にスイスで開催されたオリンピック（1928年と1948年のサンモリッツ五輪）では、連邦大統領が開会宣言を行いました。

選出

連邦大統領は、毎年12月初めに連邦議会において、連邦参事の中から1名が選任されます。連邦大統領の任期は、毎年1月1日から12月31日までです。

19世紀には、連邦大統領に選出されることは連邦参事にとって名誉なこととされていました。しかし、評価の低い連邦参事が連邦大統領に選出されることは稀でした。例えば、ヴィルヘルム・マティアス・ナエフは27年間連邦参事を務めましたが、連邦大統領に選出されたのは1853年の1度きりでした。

20世紀以降は、連邦大統領の選出において大きな議論が起こることは少なくなりました。連邦大統領職を最も長い期間務めていない連邦参事が就任するという不文律が定着したため、連邦参事は長くても7年に1度は連邦大統領を輪番制で務めることになりました。

連邦大統領に選出される連邦参事がどれだけの票を獲得できるかという点が議論になることもあります。1970-80年代には、全246票中200票を獲得すれば優秀な結果とみなされていましたが、近年は政党間の対立が激化しているため、180票を獲得すれば良い結果とみなされるようになっています。

1920年までは、例外もありましたが、連邦大統領の任期中は連邦外務省を担当することが慣習となっていました。そのため、連邦参事会では、連邦大統領退任直後の連邦参事が就任前の連邦省に戻り、新任の連邦大統領が連邦外務省を担当するという変更が毎年行われていました。また、連邦大統領はその任期期間中、連邦外務省担当参事（外相）を兼務しているにもかかわらず、スイス国外に出国しないという慣習がありました。

連邦大統領と同様に、副大統領も毎年選出されます。副大統領は連邦大統領を代行する役職であり、通常は翌年に連邦大統領に選出されることになります。

関連項目

スイスの政治
スイスの連邦大統領一覧
連邦大統領
連邦大統領 (オーストリア)
* 連邦大統領 (ドイツ)

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