遂行動詞

遂行動詞とは

遂行動詞（performative verb）とは、言語学における用語で、発言した瞬間にその動作が完了する特別な動詞を指します。つまり、「私は約束します」と言うことで約束という行為が成立し、「私は提案します」と言うことで提案という行為が成立する、といった具合です。このような遂行動詞が持つ性質を「遂行性」と呼び、遂行動詞が用いられた文を「遂行文」と言います。

この概念は、日常的な言語使用において非常に重要な役割を果たしています。なぜなら、言葉だけで具体的な行動を伴わなくても、その言葉自体が社会的な意味や効果を生み出すことがあるからです。例えば、結婚式の「誓います」という言葉は、まさにその瞬間に結婚という行為を成立させる力を持っています。

英語における遂行動詞

英語における遂行動詞の特性は、特に現在時制との組み合わせにおいて顕著に現れます。通常、現在時制は現在の状態や習慣的な動作を表しますが、遂行動詞が使用される場合、発話が行われたまさにその瞬間の一回限りの動作を表現することができます。

ただし、この特殊な用法は、以下の条件を満たす場合にのみ有効となります。

1. 主語が一人称であること
2. 動詞が現在時制であること
3. 文が平叙文であること

これらの条件が揃った場合にのみ、遂行動詞は発話と同時にその行為を成立させる力を発揮します。

具体例

以下に、英語の遂行動詞を用いた文の例を挙げます。

`I promise this won't happen again.` （このようなことが二度と起こらないと約束します。）

この文は、発話者が約束をする行為を言葉によって直接的に行っています。

`We suggest that we should tackle the problem another day.` （別の日に取り組むことを提案します。）

この文は、発話者が提案という行為を行っています。

`I deny the charge of the murder.` （私は殺人容疑を否定します。）

この文は、発話者が否定という行為を行っています。

`I advise you not to eat too much.` （あまり食べ過ぎないことをお勧めします。）

この文は、発話者が助言という行為を行っています。

その他にも、例えば「宣言する（declare）」や「命ずる（order）」、「われは歌う（I sing）（古代詩人にとって）」なども遂行動詞に該当します。

これらの文は、発話された瞬間に約束、提案、否定、助言といった行為が実行されることを示しています。言葉が単なる伝達手段ではなく、現実世界に影響を与える力を持っていることが分かります。

まとめ

遂行動詞は、言語が単なる情報伝達の手段ではなく、行為を成し遂げる力を持つことを示す重要な概念です。英語だけでなく、他の言語にも同様の概念は存在します。遂行動詞を理解することは、言語の多様な側面を理解する上で不可欠であると言えるでしょう。

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