遂行機能障害

遂行機能障害（実行機能障害）とは

遂行機能障害は、高次脳機能障害の一つであり、目標を持った一連の活動を効率的に達成するために必要な機能が損なわれた状態を指します。遂行機能は単一の認知作業ではなく、複数の過程を含む複雑な機能であるため、研究者によって定義が異なる場合があります。

遂行機能の中核を担うと考えられているのは、前頭葉、特に前頭前野背外側部です。この領域が損傷を受けると、遂行機能に関わる以下の機能に障害が現れると考えられています。

目標設定の困難
計画立案の困難
計画に基づいた行動の実行困難
効果的な行動の遂行困難

遂行機能障害の症状

遂行機能障害は、日常生活の様々な場面で支障をきたす可能性があります。認知症患者においては、遂行機能障害が社会生活に大きな影響を与えることが知られています。具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

無計画な行動
物事の優先順位付けの困難
行き当たりばったりな行動
仕事の効率低下
指示待ちで自発的な行動ができない

認知症患者に見られる遂行機能障害の例を以下に示します。

料理の手順を理解できず、調理を完了できない。
買い物リストを作成しても、店で何を買うべきか忘れてしまう。
公共交通機関を利用する際に、乗り換えや切符の購入が困難になる。
薬の飲み忘れや、服薬時間の誤り。
約束の時間や場所を間違える。
金銭管理が困難になる。

これらの症状は、患者本人の生活の質を低下させるだけでなく、介護者の負担を増大させる要因ともなります。

遂行機能障害の検査

遂行機能障害の評価には、いくつかのスクリーニング検査が用いられます。代表的なものとしては、FAB（Frontal Assessment Battery）やEXIT（Executive Interview Test）などがあります。これらの検査は、遂行機能の様々な側面を評価するために設計されており、医師や専門家が診断の補助として活用します。

まとめ

遂行機能障害は、目標達成に向けた行動を円滑に進める上で重要な機能を損なう状態です。認知症患者だけでなく、様々な原因で発症する可能性があり、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。早期発見と適切な支援が、患者の生活の質を維持・向上させるために重要です。

参考文献

認知症ハンドブック　ISBN 9784260018494
認知症テキストブック　ISBN 9784498129269

外部リンク

実行機能 - 脳科学辞典

もう一度検索