遅延耐性ネットワーク

遅延耐性ネットワーク（DTN）とは

遅延耐性ネットワーク（Delay Tolerant Networking, DTN）は、継続的なネットワーク接続が困難な環境下でも、コンピュータネットワークを利用するための技術です。この技術は、惑星間インターネットの研究から生まれましたが、現在では地球上の様々な環境で応用されています。DTNは、ネットワークが頻繁に途絶する状況、例えば移動体ネットワークやセンサーネットワークなど、接続が不安定な環境での通信を可能にします。

DTNの仕組み

DTNは、ノード間でメッセージ（バンドル）をストアアンドフォワード方式でやり取りします。これは、メッセージを一旦中間ノードに保存し、次のノードに転送する方式です。これにより、ネットワーク接続が一時的に途絶えても、メッセージを確実に目的地に届けることができます。DTNは、IPネットワークだけでなく、他の様々なトランスポート層技術上でも動作します。このため、DTNはオーバーレイネットワークとして運用され、URIに基づく命名アーキテクチャと、きめの粗いサービス提供を行います。

途絶耐性ネットワーク（Disruption-Tolerant Networking）

最近では、DTNはより広い状況を表す言葉として、途絶耐性ネットワーク（Disruption-Tolerant Networking）と呼ばれることも多くなっています。途絶は、無線通信の帯域制限、移動体ノード間の疎結合、エネルギー資源の不足、ネットワーク機器への攻撃、ノイズなど、様々な原因で発生します。DTNは、これらの途絶に対処するための技術として、その重要性を増しています。

DTNの応用例

DTNは、当初は惑星間インターネットの研究から生まれた概念でしたが、現在では以下のような様々な分野で応用されています。

移動体ネットワーク： 電車やバス、自動車などの移動体における通信は、ネットワーク接続が頻繁に途絶する可能性があります。DTNは、このような環境下でもメッセージを確実に送受信することができます。
センサーネットワーク： 多数のセンサーが分散して配置されたネットワークでは、無線通信の範囲が限られるため、ネットワーク接続が途絶しやすい状況があります。DTNは、このような環境でもデータを収集・伝送することができます。
災害時ネットワーク： 地震や台風などの災害発生時には、通信インフラが破壊される可能性があります。DTNは、このような状況でも通信を確保する手段として注目されています。
僻地ネットワーク： インフラが整備されていない地域では、ネットワーク接続が不安定です。DTNは、このような場所での通信を支援する技術として活用されています。

DTNの研究

DTNに関する研究は、世界中の様々な研究機関で行われています。

Delay Tolerant Networking Research Group: IETF（Internet Engineering Task Force）の関連グループとして、DTNに関する標準化活動などを行っています。
Technology and Infrastructure for Emerging Regions: カリフォルニア大学バークレー校のプロジェクトで、発展途上国などの地域におけるDTNの応用を研究しています。
KioskNet: ウォータールー大学の研究プロジェクトで、DTNを用いた情報共有システムを開発しています。
Diverse Outdoor Mobile Environment: マサチューセッツ大学アマースト校の研究プロジェクトで、多様な屋外環境でのDTNの応用を研究しています。
ResiliNets Research Initiative: カンザス大学とランカスター大学の共同研究プロジェクトで、災害時などにおけるネットワークの復旧を支援する技術を研究しています。
Haggle: ケンブリッジ大学のプロジェクトで、DTNを用いたデータ配信システムを開発しています。
Saratoga Tranfer Protocol: サリー大学のプロジェクトで、DTNを用いたデータ転送プロトコルを開発しています。
Live E! ～活きた地球の環境情報～: WIDE Project、東京大学、奈良先端科学技術大学院大学等の連携で推進されるセンサーネットワークの研究プロジェクトで、DTNを用いた環境情報の収集・配信を研究しています。

関連技術

* センサーネットワーク： 小出力の無線電波でセンサーノード同士を接続し、データをリレーするネットワークです。センサーネットワークは、DTNの応用分野の一つであり、接続が途絶しやすい環境でのデータ収集にDTNが活用されています。

まとめ

遅延耐性ネットワーク（DTN）は、接続が不安定な環境下でも通信を可能にする重要な技術です。惑星間通信の研究から始まり、移動体ネットワーク、センサーネットワーク、災害時ネットワークなど、幅広い分野で応用されています。DTNの研究は世界中で活発に行われており、今後ますますその重要性が増していくと予想されます。

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