過ぎし日のセレナーデ

『過ぎし日のセレナーデ』

『過ぎし日のセレナーデ』（すぎしひのセレナーデ）は、1989年10月19日から1990年3月22日までフジテレビ系列の木曜劇場枠で放送された全21回のテレビドラマです。この作品は放送終了後、13年半もの間同枠で2クールにわたる作品が存在しなかったことから、特別な意味を持ちます。

概要

物語は大財閥・海棠家の御曹司、海棠泰隆と異母弟の榊隆之の、約半世紀にわたる確執を描いています。特筆すべきは、このドラマが晩年から始まり、その後シーンをフラッシュバックさせて進行するスタイルです。善悪が単純には語れない人間模様を描くこの作品は、同時代のドラマの中でも珍しいスタンスを持っています。

主演の田村正和は、榊隆之の役を演じ、彼の人生の各年代（30代から60代まで）を表現するために、見た目を変えるためのメイクに2時間以上かけたとのこと。このことからも、役者たちの演技への並々ならぬ情熱が伝わってきます。ドラマの広告キャッチフレーズは「大人の恋は長編になる」とされ、視聴者に深い感情を呼び起こしました。

神戸市との関係

物語の前半は神戸市で撮影されています。阪神淡路大震災によって全壊した神戸雅叙園ホテルや、現在は廃墟となった摩耶観光ホテルなど、震災前の神戸の情景を映し出した映像は、後に貴重な歴史的価値を持つものとなりました。神戸の風景がドラマに彩りを添え、物語にリアリティを与えています。

キャストと役どころ

榊隆之（田村正和）
主人公で、海棠グループの総帥・海棠隆元と愛人・榊れいの間に生まれた。13歳の時、初めて海棠家の別荘訪問し、義兄・泰隆や運転手の娘・志津子と出会った。この出会いから彼らとの複雑な関係が始まる。母の死後、荒れた生活を送り、大阪で暴力団員になってしまうが、千恵との出会いで人生を見つめ直し、青果の仲買商に転身。後にはイタリアンレストランのオーナーにもなります。

海棠泰隆（古谷一行）
海棠グループの総帥の実の息子。物語を通して、家族間の複雑な葛藤と絆が描かれます。彼もまた、隆之と志津子との関係に悩まされつつ成長し、最終的には家族に求められる役割を果たしていく。

矢沢（海棠）志津子（高橋惠子）
海棠家の運転手の娘で、後に泰隆の妻となります。彼女は良いイメージの女性として描かれつつ、男性たちの間を取り巻く複雑な感情の中心にいます。この役を通して、家族愛と自己犠牲のテーマが際立っています。

榊千恵（石野真子）
隆之の妻で、家族愛の重要性を教える存在です。彼女のキャラクターは、物語全体の情感を引き立てています。

さらに、隆之の親友やその家族の描写もあり、特に石山卓（泉谷しげる）夫妻は、物語における理想的な家庭像として描かれています。

スタッフと音楽

脚本は鎌田敏夫が手掛けており、音楽は大島ミチルが担当しました。また、主題歌「愛されてセレナーデ」はヤン・スギョンが歌い上げ、ドラマ全体に感情の深みを与えています。

このように『過ぎし日のセレナーデ』は、単なる恋愛ドラマではなく、時代とともに変化する人間関係の深さを探求した意義深い作品として多くの視聴者の心に残ったドラマなのです。

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