過ぐる日のやまねこ

映画『過ぐる日のやまねこ』

『過ぐる日のやまねこ』（すぐるひのやまねこ）は、2014年に公開された日本の映画で、脚本と監督を務めたのは鶴岡慧子です。この作品は、第23回PFFスカラシップで製作されました。鶴岡は、2012年に立教大学の現代心理学部映像身体学科で制作した初の長編映画『くじらのまち』がPFFアワードでグランプリを受賞し、さらに第63回ベルリン国際映画祭を含む多くの映画祭で上映された実績があります。これは、彼女にとって初の劇場公開作品となります。

物語の舞台は、長野県上田市で、鶴岡の故郷を背景にしており、観光名所ではない何気ない風景を中心に撮影されています。映画は、2015年9月19日から渋谷のユーロスペースなどで公開され、モロッコで開催された第15回マラケシュ国際映画祭のコンペティション部門にも正式出品され、そこで審査員賞を受賞しました。

あらすじ

物語の主人公である時子（演：木下美咲）は、東京でガールズバーに勤める女性です。ある日、彼女は客とのトラブルが原因で店を解雇され、途方に暮れて町を彷徨います。そんな中、彼女は幼い頃に住んでいた田舎町へのバスに乗ることを決意します。バスの旅の中で、彼女は自分のルーツと向き合うことになるのです。

一方、田舎町に住む高校生の陽平（演：泉澤祐希）は、材木屋を営む父の正一（演：田中隆三）と二人三脚で生活をしています。陽平は、兄のように慕っていた従業員が亡くなったことから、心に深い傷を抱え、学校をサボるようになり、心の中に閉じこもっていました。

ある日、学校を不登校にして山の小屋に行った陽平は、そこで時子に出会います。初めは警戒心を抱く陽平ですが、彼女との交流を通じて次第に心が通じ合うようになります。その小屋は、実は時子が幼い頃に父と共に過ごした思い出の場所でもありました。ここで二人はあらゆる思いを語り合い、互いに心の支えとなっていきます。

陽平の父、正一は、食堂で地元で噂される「怪しい女」が時子ではないかと耳にします。正一はかつて消防団員として時子の家族を崖から救出した経験があり、彼女が再びこの町に戻ってきたことに動揺を隠せません。妄念と懐かしさが交差する中、陽平は時子との関係を深めていきます。

物語は、家族や地域、そして過去からの影響を描きつつ、登場人物たちが心の傷を癒し、再生していく姿を目の当たりにさせてくれます。また、正一が陽平と時子のために何か行動を起こす場面もあり、親の愛情や地域の絆が描かれています。

キャスト

本作には、以下のキャストが参加しています：

• - 枝波時子 - 木下美咲
• - 加野陽平 - 泉澤祐希
• - 加野正一（陽平の父） - 田中隆三
• - 原田和茂 - 植木祥平
• - 野村アキホ - 中川真桜

スタッフ

監督・脚本は鶴岡慧子が務め、プロデューサーに天野真弓が名を連ねています。撮影を小川努、編集を普嶋信一が行い、アートデザインや音楽音声の面でも質の高い作品として評価されています。

映画『過ぐる日のやまねこ』は、心の交流を描いた感動的な作品であり、日本映画界における新たな名作として多くの人々に親しまれています。

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