過酢酸

過酢酸とは

過酢酸（かさくさん、英: peracetic acid）は、過酸や過カルボン酸の一種で、略称はPAAです。この物質は、特有の鼻を突く酢酸臭を持つ液体であり、水に非常に溶けやすい性質を有しています。過酢酸は、特に消毒薬や工業的な酸化剤としての応用が多く、世界中で使用されています。

合成方法

過酢酸は主にアセトアルデヒドを自動的に酸化することによって工業的に生産されます。その化学反応式は以下のようになります：

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O2 + CH3CHO → CH3CO3H
```

また、強酸である硫酸などの触媒を用いることで、酢酸と過酸化水素から過酢酸が合成されます。これに関する反応式は次の通りです：

```
H2O2 + CH3CO2H → CH3CO3H + H2O
```

消毒剤としての特性

過酢酸はその強力な殺菌剤としての特性から、消毒薬として非常に人気があります。特に6%の濃度で販売される「アセサイド」として知られており、医療器具の滅菌や消毒において0.2%から0.3%の濃度で使用されることが一般的です。過酢酸は、ほとんどの細菌、真菌、芽胞、ウイルスに対して、グルタルアルデヒドと同等かそれ以上の効果を示すことが確認されています。さらに、グルタルアルデヒドと比較して、人体に対しての感作性、アレルギー性、変異原性が低いのも大きな利点です。

また、過酢酸の分解生成物は酢酸と過酸化水素であり、最終的には水と酸素に分解されます。これにより、環境への負荷が少ないことも消毒薬としての利点の一部です。過酢酸は、例えば炭疽菌のような芽胞にも効果を発揮し、世界保健機関（WHO）も推奨する消毒薬の一つです。

有機合成における利用

有機合成の分野においても、過酢酸は酸化剤として広く利用されています。多くの場面で過酸化水素と無水酢酸から過酢酸を生成して使用するのが一般的です。ただし、純度の高い過酢酸は爆発性を持つ可能性があり、注意が必要です。特に危険性が低いメタクロロ過安息香酸（mCPBA）を代わりに用いることが推奨されることがあります。

法律と規制

日本では、過酢酸は消防法において第五類危険物、具体的には自己反応性物質に分類されており、取り扱いには十分な注意が必要です。これに伴い、工業的な生産や使用においても適切な規制や管理が求められています。

このように、過酢酸はその高い殺菌効果や工業での応用に加え、取り扱いに関する法律や規則も整備されている重要な化学物質です。

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