過酸化アセトン

過酸化アセトンについて

過酸化アセトン（かさんかアセトン、英: Acetone peroxide）は、有機過酸化物として知られ、高性能の爆薬として使用される物質です。通常は、ジメチルジオキシランの三量体であるトリアセトントリペルオキシド、すなわちTATP（化学式 C₉H₁₈O₆）のことを指します。しかし、広義には二量体や四量体の混合物も含まれます。

特徴

過酸化アセトンはアセトン、過酸化水素水、塩酸、硫酸などの化合物から製造できます。このため、アマチュア化学者や爆弾マニアによる合成が行われることが多く、時にはテロリストによって利用されるケースもあります。実際には、過去にロンドン同時爆破事件やパリ同時多発テロ事件、ブリュッセル連続テロ事件などで利用されています。

この爆薬は比較的簡単に作成でき、殺傷能力が高いため、「サタンの母」とも称されます。日本国内でも過酸化アセトンに関連する逮捕の事例が存在します。たとえば、2016年12月に愛知県で19歳の大学生が自宅で57グラムの過酸化アセトンを製造し、2018年には公園で所持していたとして逮捕されました。また2024年には男子高校生が自宅で36グラムの過酸化アセトンを発見され、逮捕された事例もあります。

過酸化アセトンは特にアマチュア爆弾愛好家によって雷管として使われることがあります。爆発する際、少量で非密閉下では大きな炎を発生させる「爆燃」が起こりますが、密閉された環境下では爆轟が発生することがあります。過酸化アセトンの威力はTNTの70%から80%に相当するとされています。

また、過酸化アセトンには二量体、三量体、四量体の種類があり、一般に低温環境で四過酸化物が生成されやすくなります。

製法

過酸化アセトンは過酸化水素とアセトンが酸触媒の存在下で反応することで生成されます。この反応により、ケタールまたはヘミケタールである過酸化アセトンが形成されます。その際、単量体（ヘミアセタール体）はさらに過酸化水素とアセタール体を形成することがあり、反応溶液中には様々なオリゴマーの平衡混合物が存在します。特に三量体は結晶性が良いため、結晶として単離しやすく、それゆえに取り扱い時の事故が多く報告されています。

反応

過酸化アセトンの環状二量体や三量体はメタノールやベンゼン溶液中で熱分解または光分解され、単環アルカンやラクトンを生成します。通常、この過程ではO-O結合やC-C結合が切断され、酸または塩基が存在する条件下では主にO-O結合が解裂します。また、これらの過酸化物は減圧環境下でも容易に還元される性質があります。

用途

過酸化アセトンは稀に小麦粉の漂白剤として食品添加物に利用されることもありますが、その主な用途は爆薬としての利用です。特に住宅環境での合成が行われるため、安全性に問題があります。

類似化合物

メチルエチルケトンペルオキシド（MEKPO）やヘキサメチレントリペルオキシドジアミン（HMTD）、過酸化ベンゾイル（BPO）など、過酸化アセトンに類似した有機過酸化物も存在します。この中で、特にHMTDは過酸化アセトンの代替物として用いられることがあります。

過酸化アセトンに関連して知識を持つことは、特に安全性や犯罪防止の観点から重要です。

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