道場破り

道場破りとは

道場破りとは、かつて剣術、柔術、空手などの武術や武道において行われていたとされる他流試合の一つの様式です。

フィクションにおける道場破り

物語などで描かれる典型的な道場破りは、まず、腕に覚えのある武芸者が、何の紹介もなく他流の道場に乗り込みます。そして、道場側を挑発し、他流試合を強要します。試合では、師範代などの主要な門弟や道場主、時には助っ人など、道場側の戦力を全て打ち破ることを目指します。

道場破りに成功した場合、その証として道場の看板を破壊したり、戦利品として持ち去ったりします。看板を奪われた道場は、廃業に追い込まれるか、看板を買い戻さなければ運営を続けることができませんでした。これは、当時の道場にとって看板が非常に重要な意味を持っていたためです。

逆に、道場破りが失敗した場合、半殺しにされた挙句、道場から路上に放り出されるという悲惨な末路を辿ることもありました。

史実としての道場破り

時代劇や時代小説などでは、道場破りの様子が好んで取り上げられますが、実際に看板を賭けた道場破りが史実として存在したかどうかについては、疑問視する意見も多くあります。『幕末百話』や勝小吉の『夢酔独言』など、当時の記録には他流試合の記述は見られるものの、看板を賭けた道場破りのような話は見当たりません。また、そもそも当時の道場に看板が掲げられていたかどうかについても疑問が残ります。これらの理由から、道場破りは後世の創作であるという見方もあります。

プロレスにおける道場破り

プロレスの世界では、腕自慢の部外者がプロレスラーとの腕試しを求めて道場に乗り込んでくるケースがあり、これを「道場破り」と呼ぶことがあります。プロレス団体側は、このような挑戦者に対して、ガチンコでの立ち合いで実力を発揮するレスラーを対戦相手として用意するのが通例です。道場内での試合は、営利目的の興行ではないため、相手を務めるレスラーの人気や知名度などは考慮されません。

かつての新日本プロレスでは、ブレーク前の藤原喜明が道場破りの相手を務めることが多く、アントニオ猪木に挑戦しようと道場に押しかけてきた部外者を次々と打ち破ったことから、「猪木の影武者」と呼ばれることもありました。また、佐山聡も若手時代に同様の役割を担っていたことを明かしています。

アメリカのプロレスラー、ルー・テーズは、「相手が格闘技について全くの素人であったとしても、一切手を抜くべきではない」と語り、素人相手だからこそ重大な事故が起こる危険性を指摘しています。アメリカでは、かつて興行側が観客から挑戦者を募集するイベントを行っていた時代があり、ミスター・レスリング（ティム・ウッズ）が素人の挑戦を受けた試合で左手の薬指を噛みちぎられたという痛ましい事件も発生しています。

安生洋二は、UWFインターに所属していた1994年、UWF参戦を熱望していたヒクソン・グレイシーに挑戦するため、ロサンゼルスにあるヒクソン・グレイシー柔術アカデミーに乗り込み、道場破りを敢行しました。結果は、タックルからマウントポジションを奪われ、パウンドからチョークスリーパーで失神させられるという完敗に終わりました。しかし、この道場破りは、ヒクソンとUWFに対する世間の関心を高め、後のPRIDE.1におけるヒクソン・高田戦へと繋がる布石となりました。

まとめ

道場破りは、武術・武道の歴史における他流試合の一つの様式であり、フィクション作品にも多く登場します。史実としての信憑性には議論の余地があるものの、プロレスの世界では現在でもその名残が見られます。

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