道浦母都子

道浦母都子について

道浦母都子（みちうら もとこ）は1947年9月9日生まれの日本の歌人であり、現在は『未来』の選者としても活動しています。彼女は全共闘世代の抱えるさまざまな感情を詩に込めて表現し、特に1980年に発表した歌集『無援の抒情』で現代歌人協会賞を受賞しました。これ以降も、自立を目指す女性たちの姿を静かな調子で詠み続けてきました。

来歴

道浦は和歌山県和歌山市に生まれ、祖父の道浦若八は部落解放運動に関与していた和歌山県の議員でした。父は土木技師として働いており、戦後、和歌山に戻ることに。中学時代まで和歌山で過ごし、その後、大阪のニュータウン開発のために大阪府に移ります。大阪府立北野高等学校から早稲田大学第一文学部演劇学科に進学し、そこで学生運動に関わるようになります。

道浦は第1次羽田事件での悲劇を受けて深く影響を受け、反対派の党に身を置くことで苦しい学生生活を送りながらも、1970年には朝日ジャーナルに論文が入選します。それを機に1971年に短歌結社『未来』に参加し、近藤芳美に師事して短歌の世界に入ります。1972年に早稲田大学を卒業後、大阪に帰り新聞社で記者として働くことになりますが、私生活では医師との結婚後、DVが理由で離婚するという辛い経験をします。

1980年には『無援の抒情』を発表し、短歌界に新風を巻き起こしました。この歌集は10万部を超えるベストセラーとなり、彼女の名を広めるきっかけとなりました。歌集のタイトルは、高橋和巳の作品から取られたもので、当時の若者たちの孤独と苦悩を描写しています。2008年には和歌山県文化賞を受賞し、都内の各新聞社で歌壇選者としても活躍しています。

エピソード

道浦は同じ年に生まれた歌手、都はるみとも交流があり、1998年の楽曲『邪宗門』では作詞を担当しました。この曲は高橋和巳の小説を基にしており、戦前の宗教弾圧に関するテーマを取り扱っています。また、小説家の黒川博行との親交も深く、彼の作品『後妻業』には道浦の父が体験したエピソードが影響を与えているとされています。

主な著書

道浦は多岐にわたる著書を持ち、自身の短歌を表現するための歌集やエッセイを何冊も出版しています。代表的な歌集には『無援の抒情』のほか、『水憂』『ゆうすげ』『風の婚』などがあります。これらの作品は、彼女の個人的な経験を通じて、生と死、愛と孤独といったテーマを深く掘り下げています。

彼女の代表的な歌には以下のようなものがあります。

• - `神田川流れ流れていまはもうカルチェラタンを恋うこともなき（『無援の抒情』）`
• - `全存在として抱かれいたるあかときのわれを天上の花と思わむ（『ゆうすげ』）`
• - `風に群れ咲くコスモスの花（『風の婚』）`

道浦母都子は、詩を通じて日本の女性たちの声を代弁し続けており、その作品は今なお多くの人々に親しまれています。彼女の詩と細やかな感受性は、未来の歌人たちへの大きな影響を与えているのです。

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