道路交通情報通信システム

道路交通情報通信システム（VICS）とは

道路交通情報通信システム（VICS）は、日本の道路交通情報を収集・処理し、カーナビゲーションなどの車載装置に表示するシステムです。渋滞情報、所要時間、事故や工事の情報などをリアルタイムで提供し、ドライバーの安全運転と快適な移動を支援します。

VICSで提供される情報

VICSは、以下の様な様々な道路交通情報を提供しています。

渋滞情報
所要時間
事故・故障車・工事情報
速度規制・車線規制情報
駐車場の位置、満空情報

これらの情報は、日本道路交通情報センター（JARTIC）が、都道府県警察や道路管理者から収集しています。

VICSの情報提供方法

VICSは、以下の3つのメディアを通じて情報を提供しています。

1. FM多重放送：ラジオのFM放送波を利用して、文字情報や簡易図形情報を広範囲に提供します。
2. 光ビーコン：道路脇に設置された光ビーコンから、赤外線通信により近距離の交通情報を提供します。
3. ITSスポット（DSRC）：高速道路や一部一般道に設置された路側機から、大容量の情報を高速で提供します。

これらの情報を受信するには、VICS対応のカーナビゲーションや、対応する車載器が必要です。

VICSの種類

VICSは、情報の伝達方法によっていくつかの種類に分けられます。

電波ビーコン

かつては2.4GHz帯の電波ビーコンが使用されていましたが、2022年3月末にサービスを終了しました。現在は、5.8GHz帯のDSRC（ITSスポット）が主流となっています。DSRCは、より多くの情報を提供でき、広範囲の交通情報を取得可能です。

ITSスポット（5.8GHz帯DSRC）

ITSスポットは、全国の高速道路や一部の一般道に設置されており、より広範囲かつ詳細な情報を提供します。従来の電波ビーコンに比べて、情報量が大幅に増加し、最大1000km先までの高速道路情報や、周辺の一般道情報、ライブカメラ映像などを提供可能です。

光ビーコン

光ビーコンは、都市部やその周辺の一般道に多く設置されており、赤外線通信を用いて近距離の交通情報を提供します。光ビーコンは、VICS情報の収集にも役立っており、個々の車両の通過時間から、より正確な渋滞情報を生成しています。

FM多重放送

FM多重放送は、NHK-FMの電波を利用して、広範囲の交通情報を文字で提供します。VICS WIDEサービスでは、プローブ情報を活用した詳細なルート検索や、気象情報、災害情報などのポップアップ表示が可能です。

VICSの表示形態

VICSの情報は、以下の3つのレベルで表示されます。

1. LEVEL.1 文字表示型：FM多重放送などで、文字のみで渋滞情報などを表示します。
2. LEVEL.2 簡易図形表示型：渋滞情報を地図上に図形で表示します。
3. LEVEL.3 地図表示型：カーナビの地図上に渋滞情報などを重ねて表示します。

VICSの歴史

VICSは、1996年に東京・神奈川・埼玉・千葉の4地区でサービスを開始しました。その後、全国各地にサービスエリアを拡大し、現在では日本全国で利用可能です。VICSは、道路交通情報の提供だけでなく、高度道路交通システム（ITS）の一翼を担う重要なシステムとして発展してきました。

黎明期

VICSの前身となるシステムは、1970年代から研究開発が始まりました。初期のシステムは、道路脇のビーコンと車載機の間で情報をやり取りする方式で、経路誘導や交通情報の提供を目的としていました。しかし、当時は技術的な課題や、官庁間の調整の問題があり、実用化には至りませんでした。

VICSの誕生

1990年代に入り、複数の研究開発プロジェクトが統合され、「道路交通情報通信システム（VICS）」として実用化に向けた動きが加速しました。1995年には、道路交通情報通信システムセンター（VICSセンター）が設立され、1996年にサービスを開始しました。

VICSの発展

VICSは、サービス開始以降、提供エリアの拡大、情報量の増加、技術の進化などを経て、現在では多くのドライバーにとって欠かせないシステムとなっています。2015年には、VICS WIDEサービスが開始され、より詳細な交通情報や、災害情報などの提供が可能になりました。

VICSの課題

VICSは、交通情報を提供する上で、いくつかの課題も抱えています。

情報提供範囲の限界：FM多重放送は都道府県単位の情報提供のため、県境をまたぐルートでは情報が不足することがあります。
渋滞情報の遅延：渋滞が発生してから情報が提供されるため、情報を受信した時点ですでに渋滞が解消している場合があります。
センサーの限界：渋滞センサーは主要道路にしか設置されていないため、その他の道路では情報が得られないことがあります。

これらの課題を解決するため、プローブ情報を活用したリアルタイムな情報提供や、より広範囲な情報提供に向けた技術開発が進められています。

まとめ

VICSは、日本の道路交通情報をリアルタイムで提供する重要なシステムです。カーナビゲーションと連携し、ドライバーの安全運転と快適な移動をサポートしています。今後も、技術の進化とともに、より便利で信頼性の高いシステムへと発展していくことが期待されます。

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