DSRC

DSRC（Dedicated Short Range Communications）は、5.8GHz帯のISMバンドを使用する、車両との無線通信に特化した技術です。日本語では専用狭域通信、または狭域通信とも呼ばれます。この技術は、一方向または双方向の無線通信を可能にし、高度道路交通システム（ITS）の重要な要素として機能しています。

DSRCの概要

DSRCの最大の特徴は、その通信エリアを意図的に狭く制御できる点にあります。これは、アンテナの指向性と高精度なキャリアセンスによって実現されます。これにより、路側機と車載器間の通信が効率的に行われ、ドライバーに対して様々なサービスを提供することが可能になります。

通信プロトコルに関しては、OSI参照モデルの7層構造のうち、高速走行時の通信を考慮して第3層から第6層を省略し、物理層、データリンク層、応用層の3層で構成されています。周波数帯は国際的に大まかに統一されていますが、具体的な実装は日米欧の地域ごとに異なり、相互の互換性はありません。

日本におけるDSRC

日本では、DSRCはARIB STD-T75「狭域通信（DSRC）システム標準規格」によって規格化されており、相互接続性が確保されています。さらに、基地局設置のためのガイドラインとしてRC-003が策定されています。変調方式にはASK方式とπ/4シフトQPSK方式の2種類があり、ASK方式では1Mbps、π/4シフトQPSK方式では4Mbpsの通信速度を実現しています。

ARIB STD-T75で規定されているDSRCは、固定長フレームで構成される時分割多元接続（TDMA）方式を採用しています。また、一つの狭い通信領域に複数の車両が存在することを想定し、確実で効率的な通信を行うために、スロッテドアロハ方式を採用し、一定間隔でタイムスロットを設けて送信タイミングを制御しています。さらに、インターネット接続やアプリケーションの使いやすさを向上させるための仕様として、ASL（Application Sub-Layer）とDSRC基本アプリケーションインタフェースがあり、ASLはARIB STD-T88として規格化されています。

ASK方式を採用したシステムとしては、ETCが挙げられます。一方、π/4シフトQPSK方式は、VICSなどのETC2.0（旧：ITSスポットサービス）に使用されており、ガソリンスタンドや駐車場でのキャッシュレス決済、インターネット接続、物流管理など、幅広い分野での活用が期待され、実用化や本格運用に向けた検討が進められています。

ETC2.0

ETC2.0は、DSRCを活用した高度な情報提供サービスです。特に、ETC2.0渋滞情報サービスは、高速道路を中心にドライバーにリアルタイムな交通情報を提供し、より安全で快適なドライブをサポートしています。

日本における周波数

DSRCで使用される周波数帯は、路側機と車載器で異なります。路側機は5775, 5780, 5785, 5790, 5795, 5800, 5805 MHzの周波数を使用し、占有周波数帯幅は4.4MHzです。一方、車載器は5815, 5820, 5825, 5830, 5835, 5840, 5845 MHzの周波数を使用し、占有周波数帯幅も同様に4.4MHzです。

まとめ

DSRCは、ITSの根幹をなす重要な技術であり、その応用範囲は日々拡大しています。ETCやETC2.0といったサービスの提供を通じて、私たちの生活に欠かせない技術となっています。今後の技術革新により、さらに便利で快適な社会が実現することが期待されます。

関連項目

ETC

外部リンク

ITS-TEA｜(一財)ITSサービス高度化機構

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