道路照明灯

道路照明灯

道路照明灯は、道路を照らすために設置される照明設備であり、夜間やトンネル内など、視界が悪い状況下での安全確保に不可欠です。道路状況や交通状況を的確に把握し、円滑な交通をサポートする役割を担っています。

道路照明の目的と要件

道路照明灯は、夜間や明るさが急変する場所で、良好な視環境を提供し、道路交通の安全と円滑化を目的として設置されます。設置にあたっては、道路構造令に基づき、道路管理者による設置が義務付けられています。

道路照明の種類

道路照明灯は、配置方法により以下の3種類に分類されます。

連続照明: 一般道や高速道路などで、一定間隔で照明を配置し、区間全体を連続的に照らす方式です。
局部照明: 交差点、橋梁、歩道、インターチェンジ、休憩施設など、特定の場所を重点的に照らす方式です。
トンネル照明: トンネル内の視環境を改善するために設置される照明です。トンネル特有の視覚的な問題に対応するため、特別な配慮がなされています。

トンネル照明

トンネル照明は、ドライバーに視覚情報を提供する目的で設置されます。トンネル内部は閉鎖された空間であるため、特有の視覚的問題が生じます。そのため、トンネル照明は、これらの問題に対応した設計となっています。

基本照明: トンネル全線にわたって一定間隔で設置される照明です。設計速度に応じた視距離を確保できるよう、平均路面輝度が定められています。
入口部照明: 昼間にトンネルへ進入する際の急激な輝度変化を緩和し、ブラックホール現象を防ぎます。トンネル外部の明るさに順応したドライバーの目が、トンネル内を詳細に識別できない状態を改善します。
出口部照明: 昼間にトンネル出口付近の野外輝度が高い場合に、出口手前の障害物や先行車を見やすくします。ホワイトホール現象を防ぎ、トンネル外部の状況を認識しやすくします。
停電時用照明: トンネル内で停電が発生した場合に、重大な事故を防ぐために設置されます。停電直後から発電機や蓄電池から電力を供給し、点灯を維持します。

照明方式

道路照明灯の設置方式には、様々な種類があります。

ポール照明方式: 照明柱の先端に照明器具を取り付け、道路の線形に沿って配置する方式です。最も一般的な方式で、広く採用されています。グレアを減らし、輝度分布を広げるために、照明柱の高さを調整します。
構造物取付け照明方式: 電柱や橋梁、立体交差の擁壁などの構造物に照明器具を取り付ける方式です。
低位置照明方式: 路面から約1mの高さに照明器具を設置する方式です。光漏れが少なく、景観に配慮できます。グレア対策が重要となります。
高欄照明方式: 橋梁の高欄に照明器具を取り付ける方式です。
ハイマスト照明方式: 高さ20m以上のマストに複数の照明器具を取り付ける方式です。駐車場や駅前広場など、広い範囲を照らすのに適しています。
カテナリ照明方式: ポール間にワイヤーを張り、照明器具を吊り下げる方式です。風の影響を受けやすく、日本では施工事例が少ないです。

光源の種類

道路照明灯には、様々な種類の光源が用いられてきました。

蛍光水銀ランプ: 1960年代に主流だった光源です。演色性は低いものの、当時としては発光効率に優れていました。
低圧ナトリウムランプ: 1960年代のトンネル照明で主流でした。煤煙透過率の低いトンネル内での視認性に優れていました。
高圧ナトリウムランプ: 1970年代から1980年代にかけて普及した光源です。経済性、定格寿命、演色性に優れていました。
Hf蛍光ランプ: 2000年代以降に導入された高効率な蛍光ランプです。トンネル照明の基本照明に用いられました。
メタルハライドランプ: 高圧ナトリウムランプよりも演色性に優れ、2000年代以降に採用されました。セラミックメタルハライドランプは、トンネル照明の入口部照明に用いられています。
LED: 省電力、長寿命、低誘虫性などの特徴を持つ光源です。近年、急速に普及が進んでいます。

LED道路照明灯の特徴

LED（発光ダイオード）を使用した道路照明灯は、従来のHIDランプに比べて多くの利点があります。

省電力: 消費電力を大幅に削減し、二酸化炭素排出量の抑制に貢献します。
長寿命: 光源の交換頻度を減らし、メンテナンスコストを削減します。
低誘虫性: 虫が好む紫外線をほとんど発しないため、虫の飛来や器具の汚れを防ぎます。
光の調整機能: 段階調光、初期照度補正、スロースタート点灯、配光制御など、様々な機能を備えています。

LED道路照明灯は、省エネルギーで環境に優しく、安全で快適な道路環境を実現するための重要な要素となっています。

参考文献

照明学会『照明ハンドブック』（第2版）オーム社、2003年11月20日。
高原健一「省エネで安全・安心なLED道路照明」（PDF）『電気設備学会誌』第34巻第1号、電気設備学会、2014年1月、30-32頁。
玉井崇史「高速道路における道路・トンネル照明の 技術動向」（PDF）『電気設備学会誌』第37巻第2号、電気設備学会、2017年2月、95-99頁。
深尾竜陽「トンネル照明の設置基準」（PDF）『電気設備学会誌』第42巻第5号、電気設備学会、2022年5月、265-270頁。

関連項目

街灯
街路灯
防犯灯

もう一度検索