遠い旅路

松任谷由実の9枚目のシングルとして1977年11月5日にリリースされた「遠い旅路」は、そのリリース背景と楽曲の魅力、そして現在に至るまでの経緯において、特筆すべき点が多い作品です。

幻の主題歌

表題曲「遠い旅路」は、もともと山本周五郎の小説『柳橋物語』を原作とするTBS系の時代劇ドラマ『おせん』の主題歌として依頼された楽曲でした。しかし、制作最終段階で歌モノの主題歌は使用しないという方針に転換されたため、残念ながらドラマで使用されることはありませんでした。時代劇という舞台にユーミンの楽曲がどのように溶け込むのか、実現すれば非常に興味深い試みであっただけに、幻となった経緯は惜しまれます。

「ナビゲイター」との両A面

B面に収録された「ナビゲイター」は、三菱電機の「ダイヤトーンステレオ」のCMソングとして使用され、ユーミン自身もCMに出演しました。北海道で撮影されたCMの映像と、楽曲の持つ爽やかで都会的なイメージが相まって、大きな話題を呼びました。この楽曲はその後、2001年に発売されたベスト・アルバム『sweet,bitter sweet〜YUMING BALLAD BEST』に収録され、現在でも比較的容易に聴くことができます。

オリジナルアルバム未収録とCDの高騰

「遠い旅路」は、現在に至るまでオリジナルアルバムには収録されていません。そのため、長らく入手困難な状況が続き、CDシングルが中古市場で高額で取引される傾向にありました。しかし、2018年9月24日より、主要な音楽配信サイトで楽曲の配信が開始されたため、現在では誰でも手軽に「遠い旅路」を聴くことができるようになりました。

チャート成績と楽曲の魅力

オリコンチャートでは、登場週数は15週、最高順位は週間38位、累計5.0万枚のセールスを記録しました。決して爆発的なヒットとは言えませんが、楽曲の持つ普遍的な美しさ、そしてユーミンの歌声の魅力は、時代を超えて多くの人々を惹きつけています。

Skoop On Somebodyによるカバー

「ナビゲイター」は、2011年にSkoop On Somebodyによってカバーされ、シングル『遠くても 遠くても』のカップリングに収録されました。ユーミンのオリジナルとは異なる、R&Bテイストのアレンジが施されており、新たな魅力が引き出されています。

「遠い旅路」は、時代劇主題歌という幻の企画から生まれた楽曲でありながら、ユーミンの音楽性の幅広さを示す貴重な作品と言えるでしょう。「ナビゲイター」と共に、現在では配信で手軽に聴けるようになったことは、多くの音楽ファンにとって喜ばしいニュースです。

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