遠くまで (稲葉浩志の曲)

「遠くまで」 - 稲葉浩志のソロシングルの魅力

「遠くまで」は、日本の人気音楽ユニットB'zのボーカリスト、稲葉浩志が1998年にリリースした初のソロシングルです。この楽曲は、前年に発表されたアルバム『マグマ』の延長線上に位置付けられ、その制作過程では多くの思考が巡らされました。

1998年12月16日にRooms RECORDSから発売されたこのシングルには、主に3曲が収録されています。稲葉はインタビューで、ソロプロジェクトの一環としてこのシングルが生まれた背景を語っており、ライブツアー『B'z LIVE-GYM '98 "SURVIVE"』の開始にあたり、個人の音楽活動を形にする必要性を感じたと言います。「そういえば、まだソロシングルを出していない」という思いが、この作品の誕生を促したのです。

収録曲はすべて打ち込みを一切使用せずにレコーディングされ、本格的な音楽スタイルが際立っています。ただし、収録された楽曲はオリジナルアルバムには含まれておらず、表題曲の「遠くまで」はコンピレーションアルバム『BEST HIT BEING』に収録されています。興味深いことに、残りの2曲のうち1曲は「LOVE LETTER」として後にアルバム『志庵』に収められています。

ジャケットのアートワークは九十九里浜で撮影され、視覚的にも聴覚的にもファンの心を掴む一枚となっています。加えて、全ての収録曲についてビデオクリップが制作されており、視覚的にも楽しめる要素が加わっています。

楽曲の詳細と映像の世界

「遠くまで」では稲葉の独自のコンセプトが表現されており、草木が生い茂る森を抜けた先のニューヨークの街中で、周囲の人々が吸血鬼や動物に変化していくという幻想的な設定があります。この設定は、歌詞の内容を強調する映像となり、周囲の環境に影響されながら生きる人間の姿を描写しています。教育的なメッセージや社会的なテーマを取り入れた映像は、聴く者に深く響くものとなっています。

「CHAIN」はモノクロの映像で、さまざまなロケーションで稲葉がマイクを持ちながら歌う姿が映し出されます。特に、ハーレムの公園でのショットが印象的で、そこにある空気感も際立っています。独特の雰囲気が、曲の持つ力強さと密接に結びついています。

「Not Too Late」は、黒と白をテーマにしたビジュアルが特徴で、稲葉が黒い衣装で直立して歌う姿が映し出される一方、白のセーターを着て海を背景に佇むシーンが、強いコントラストを生み出しています。この二面的な映像は、楽曲の内包する多様な感情を見事に表現しています。

参加ミュージシャンとタイアップ

「遠くまで」では、稲葉浩志がボーカルだけでなく、全曲の作詞、作曲、編曲を手がけ、音楽プロデューサーとしての顔も見せています。他には、寺島良一がギターを担当し、さまざまなミュージシャンがサウンドに厚みを加えています。これは稲葉のソロアーティストとしての成長を示す重要な要素です。

本作はまた、いくつかのメディアタイアップも実現しており、TBS系『王様のブランチ』や『スーパーサッカー』などでテーマソングとして利用されました。これにより、楽曲は多くの人々に親しまれることとなります。

「遠くまで」は、稲葉浩志の音楽の奥深さと独自性を存分に示した記念碑的な作品です。他のアーティストとは一線を画す個性的な音楽スタイルと、それを支えるビジュアル表現が、新しい時代の音楽ファンに魅力を伝え続けています。

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