遠山一行

遠山 一行（とおやま かずゆき）

生涯と業績

遠山一行は、1922年に東京で生まれ音楽に深い情熱を注いできた日本の音楽評論家であり実業家です。彼の父は日興証券の会長を務めた遠山元一であり、幼少期から音楽に触れ合う環境に育ちました。彼はクリスチャンの家庭に生まれ育ち、プロテスタントの信仰を持ち続けています。

彼は1929年に成城学園小学校に入学し、当時の同級生には加藤一郎がいました。しかし、成城事件をきっかけに同校を自主退学し、麻布区立南山小学校に転校。高等学校では酒井悌からチェロや和声学を学び、1940年からは合唱団にも参加し、多くの名作を演奏しました。

1942年には東京帝国大学文学部美学美術史学科に進学し、戦中も学び続け、戦後には大学院で音楽美学を専攻しました。この頃に執筆した『音楽する心』は注目を集め、1948年には毎日新聞に音楽時評を連載するようになります。

彼のキャリアは教学の分野にとどまらず、文化活動にも革新をもたらしました。1951年には渡仏し、パリ音楽院で音楽史を学び、1962年には遠山音楽財団を設立、理事長を務めることになりました。この財団は、近代日本の作曲家の自筆譜など、数十万点に上る資料を収蔵しており、その後も彼の活動は多岐にわたりました。

受賞歴と貢献

1983年には東京文化会館の館長に就任し、1985年には紫綬褒章を受章。1993年には勲三等旭日中綬章も受けるなど、日本の音楽界における彼の貢献は高く評価されました。また、2010年には明治学院大学から名誉博士号を授与されています。

雑誌や新聞での音楽時評に加え、彼の著書は音楽に関する広範な知見を反映しており、『私の音楽手帳』や『いまの音むかしの音』など、多くの著作を残しました。特に、『遠山一行著作集』全6巻は彼の思想と学びの結晶です。

その他の活動

遠山はジャズの愛好家でもあり、アルフレッド・コルトーなどの演奏家を取り上げたラジオ番組「名演奏家を聴く」でも知られています。軽妙な語り口でコルトーのエピソードを紹介し、音楽の楽しさと深さを再認識させていました。

また、愛猫家として知られており、自宅の庭には野良猫たちが住みついていました。彼が名付けたユニークな名前はその愛情を物語っています。1997年には教育についての活動にも参加し、「新しい歴史教科書をつくる会」に賛同者の一人として名を連ねました。

一行の哲学と影響

音楽に対する深い理解と思索は、遠山一行の評論の根底に流れていました。彼は時折、音楽を単なる娯楽としてではなく、深い思索や文化の象徴として捉えていました。彼の影響を受けた多くの評論家や音楽家が、現在の日本音楽界を構築していることは間違いありません。

2014年、遠山一行は92歳で死去しましたが、その業績と思想は今なお多くの人々の心に生き続けています。

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