遠藤芳信

遠藤 芳信（えんどう よしのぶ）

遠藤芳信は、1947年（昭和22年）に福島県安達郡本宮町に生を受けた日本の教育学者です。その専門分野は教育方法学および日本軍政史に及び、特に近代日本の軍隊における教育の歴史に関する研究において重要な貢献をなしました。長年にわたり北海道教育大学で教育研究に従事し、退職後には同大学の名誉教授の称号を贈られています。学術的な学位としては、東京大学より教育学博士号を取得しています。

その学究の道は、1970年に千葉大学教育学部を卒業することから始まりました。教育への深い関心から、さらに専門的な知識を深めるため東京大学大学院教育学研究科に進学。学校教育学専門課程の博士課程にて高度な研究に取り組み、1978年に単位を取得して退学しました。大学院での学びを終えた後、同年からは教育現場を経験すべく、千葉県内の小学校教諭として教壇に立ちました。この現場での経験は、その後の教育方法学の研究に生かされたことでしょう。

小学校教諭としての勤務を経て、再びアカデミックな世界に戻り、北海道教育大学教育学部函館校の助教授に就任しました。函館の地で、教育学の研究をさらに進めるとともに、未来の教員育成に力を注ぎました。その後、同校の教授に昇任し、教育学分野における中心的な役割を担うこととなります。2013年に大学を定年退職するまで、多くの学生を指導し、活発な研究活動を展開しました。

遠藤教授の研究は、教育方法論に関する理論的研究に加え、近代日本の歴史、特に軍隊という特殊な組織における教育のあり方やその変遷に深く切り込んだ点で特徴的です。明治維新以降の日本の近代化過程において、国民国家の形成や兵士の育成に教育がどのように関わったのか、緻密な文献研究に基づいて明らかにしました。その研究成果は国内外で高く評価されており、1977年には阿南惟敬研究奨励賞を受賞するなど、早期からその才能が認められていました。さらに、長年の研究を基にした論文によって、1992年に東京大学から教育学博士号が授与されました。これは、氏の研究が学術的に確立されたものであることを示しています。

遠藤教授の著作は多岐にわたり、その主要な研究テーマを反映しています。初期の代表的なものとしては、明治時代初頭の軍学校設立論を論じた『明治前期における連隊学校設立論』（1975年、錦正社）や、西南戦争前後の歩兵訓練法を考察した『西南戦争前後の歩兵操典の考察』（1979年、軍事研究社）があります。また、教育現場における実践的な課題にも目を向け、『集団づくりと教師の指導性』（1983年、明治図書出版）といった著作も発表しています。そして、軍隊教育史研究の集大成ともいえるのが、『近代日本軍隊教育史研究』（1994年、青木書店）です。これらのほかにも、論文や共著など、多数の重要な業績を残しており、日本の教育学、特に近代史研究に多大な貢献をしました。

遠藤芳信氏は、教育現場での実体験と、アカデミックな歴史研究という二つの視点から日本の教育を深く探求した研究者です。彼の研究は、単なる歴史的事実の羅列にとどまらず、教育が社会や国家の形成にどのように関わってきたのかという、より大きな問いに対する洞察を与えています。北海道教育大学名誉教授としての地位や、数多くの著書、受賞歴は、氏の教育学界における確固たる地位と貢献の大きさを物語っています。その研究成果は、今後も日本の教育史を学ぶ上で不可欠なものとして参照され続けるでしょう。

（参考文献：『新訂 現代日本人名録 2002 あ-かと』）

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