遠藤隆吉

遠藤隆吉：実学主義を貫いた教育者

遠藤隆吉（1874年-1946年）は、日本の近代において重要な役割を果たした思想家、社会学者、そして教育者です。群馬県前橋市に生まれた彼は、東京帝国大学文科大学哲学科を卒業後、東京高等師範学校講師の職に就きます。しかし、官僚主義を嫌い、自ら理想とする教育を実践するため、官職を辞して私塾「巣園学舎」を設立しました。

徹底した実学主義と「硬教育」

遠藤の教育理念は「硬教育」として知られています。これは、単なる知識の詰め込みではなく、文武両道の鍛錬を通して生徒の人格を陶冶することを目指すものでした。困難な課題に挑ませることで、生徒の潜在能力を引き出し、真の学力を養うことを重視しました。この理念は、彼が創設した巣鴨中学校、巣鴨高等商業学校（現・千葉商科大学）の教育にも色濃く反映されています。

巣鴨学園の創設と発展

1922年、遠藤は旧制巣鴨中学校を創立します。当時の私学設立は、大財閥からの寄付が一般的でしたが、遠藤は私財を投じて学園を設立。これは彼の教育への強い情熱と信念を示すものでした。1928年には旧制巣鴨高等商業学校を設立し、さらに1936年には財団法人巣鴨学園総裁に就任。校長職を長男の遠藤健吉に譲りながらも、学園の発展に尽力しました。また、短期間ですが私立成美高等女学校の校長も兼務しています。

家族と晩年

遠藤は、東京音楽学校（現東京芸術大学音楽学部）初代校長の伊沢修二の長女と結婚し、10人の子をもうけました。しかし、長女と次男を幼くして亡くすという悲しみも経験しています。彼の娘婿には法学者の近藤英吉、六女の婿には、後に51年間巣鴨学園の校長を務めた堀内政三がいます。晩年は腎盂炎、膀胱炎、そして脳梗塞と闘病生活を送った後、1946年に71歳で亡くなりました。

研究内容と業績

遠藤の研究は教育学にとどまらず、社会学にも及んでいます。1925年には東京放送局で「東西の文化的競争」という講演を行い、その内容は『ラヂオ講演集』に収録されています。また、『発音統計』や『男女青年之心理及教育』などの共著、山鹿素行の『士道』の校訂など、多岐にわたる著作・編著書を残しました。さらに、ギツヂングスの『社会学』やウォードの『応用社会学』などの翻訳にも携わっています。1934年には、還暦を祝う記念論文集も刊行されています。

まとめ

遠藤隆吉は、教育者として、社会学者として、そして思想家として、日本の近代社会に多大な貢献をしました。彼の教育理念「硬教育」は、現代においても多くの示唆を与えてくれるものです。官僚主義を嫌い、自らの信念を貫き通した彼の生涯は、教育者を目指す者にとって、大きな模範となるでしょう。彼の功績は、巣鴨学園という教育機関を通じて、現在も受け継がれ、発展し続けています。

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