遠藤雄幸

遠藤 雄幸（えんどう ゆうこう）は、1955年1月9日生まれの日本の政治家、実業家です。福島県双葉郡川内村出身で、現在、同村長を5期にわたり務めています。福島第一原子力発電所の事故発生時、村民の避難を余儀なくされた周辺12市町村において、事故前から村長を務め続けている唯一の人物として知られています。

遠藤氏は、1977年に福島大学教育学部（現：人間発達文化学類）を卒業後、父が営む金物建材販売業、有限会社わたやに入社し、後に取締役社長に就任。実業家としての経験を積んだ後、1999年4月には川内村議会議員に就任し、1期務めました。

2004年4月、川内村長選挙で初当選。村長就任以降、村政のみならず、地域や県の発展のため、また林業振興や社会福祉、教育、スポーツ振興など多岐にわたる分野で要職を歴任しました。具体的には、福島県町村会副会長、双葉地方町村会長、双葉地方広域市町村圏組合管理者、全国水源林造林協議会連合会監事、福島県水源林造林推進協議会長、福島県緑資源造林推進協議会長、川内村社会福祉協議会長、川内村体育協会長、主要地方道小野富岡線改良整備促進期成同盟会長などを務めたほか、ふくしま市町村支援機構理事長、福島大学経営協議会学外委員といった現在の役職にも繋がる活動を行っています。

遠藤氏の経歴において、最も特筆すべきは、川内村長として直面した福島第一原子力発電所事故への対応です。2011年3月11日の東日本大震災発生時、双葉地方町村会長を務めていた遠藤氏は、翌12日朝には富岡町長（当時）からの原発状況に関する連絡を受け、川内村内の公共施設を開放して避難者の受け入れを決定します。

しかし、事態は急変。1号機、3号機での水素爆発により、川内村全域が屋内退避区域に指定されます。村は原発事故の深刻化を受け、15日に役場を閉鎖。遠藤氏は災害対策本部のメンバーや富岡町長と協議の上、16日には苦渋の選択として、全村避難を決定しました。避難先となった郡山市のビッグパレットふくしまは、地震による被害があったにもかかわらず、遠藤氏の旧知の館長のご厚意により、避難者を受け入れることができたと後に語っています。

避難先のビッグパレットふくしまには、4月12日には川内村役場の仮庁舎が設置され、業務が再開されました。当初、遠藤氏は村への帰還は今後5年程度は困難だろうと考えていました。しかし、同年4月頃、川内村で測定された空間放射線量が、避難先の郡山市よりも低いという予想外の情報が入ります。この情報に基づき、遠藤氏は村の復旧・復興計画の策定を職員に指示しました。

帰村実現に向け、放射線に関する多くの文献を読み解くなど、策を模索する中で、福島大学を中心とする調査団から打診を受け、2011年10月末、チェルノブイリ原子力発電所事故の被災地を訪れることになります。ウクライナ・プリピャチの、かつての住民の生活が止まったまま放置された家々、草木が茂る街並み、そして事故で消滅した自治体名を墓標のように並べたモニュメントなどを視察。また、事故で避難を強いられた住民との交流や、食品・環境の安全確保のための取り組みを学ぶ中で、「必ず古里に帰る」という確固たる決意を抱くに至りました。

チェルノブイリでの経験を胸に、遠藤氏は帰村への歩みを加速させます。2012年1月31日、役場機能ごと避難していた9町村の中で、川内村は最も早く帰村を宣言しました。そして、同年3月26日には、村役場の機能が川内村内で再開。これにより、村民の帰還に向けた具体的な道筋がつけられました。

役場機能を戻した後、遠藤氏は村の再生に向けた様々な施策を推進しました。村立川内小中学園の設立による教育環境の整備、手厚い子育て支援、高齢者の生きがいづくり、地域産業の活性化（ワイン醸造やイチゴ栽培など）、企業誘致による雇用創出など、多角的な取り組みを展開。これらの努力が実を結び、村民の帰村が進み、2020年までに住民の8割が故郷に戻るという成果に繋がりました。

遠藤雄幸氏は、未曽有の原子力災害という困難に立ち向かい、全村避難という事態を経て、住民の帰還と村の復興・再生に強いリーダーシップを発揮してきました。その経験と決断は、今後の福島の復興にとっても重要な示唆を与えています。

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