遠隔病理診断

遠隔病理診断（テレパソロジー）について

概要

遠隔病理診断、またはテレパソロジーとは、特別な顕微鏡を使用して病理標本を観察し、病理医が通信回線を介して病理診断を行うプロセスを指します。この技術は、特に術中迅速病理診断において重要であり、病理医がいない場合でも迅速に診断を行うことができます。遠隔医療や遠隔診断の一環として位置付けられています。

技術的背景

テレパソロジーの多くの実施例では、他の医療機関で行われる術中迅速病理診断に関連しています。このプロセスでは、手術中に迅速に病理標本を作成し、送受信機を使用して異なる医療機関へ病理診断を依頼します。病理組織像の観察は、特殊な顕微鏡で撮影された病理標本の画像を用いて行われます。

保険診療においては、テレパソロジーによる術中迅速病理標本作製に適用される施設基準が定められています。また、送信側と受診側の医療機関は、地方社会保険事務局長に届出を行う必要があります。

利用状況

平成23年から平成26年にかけて、テレパソロジーによる術中迅速病理組織標本作製を行う医療機関の届出は増加傾向にありました。送信側が74件から88件に、受信側も34件から49件に増加しましたが、病理診断科診療所の整備が求められています。

日本医師会は、遠隔医療を専門医師が他の医師を支援する「Doctor to Doctor (DtoD)」と、医師が遠隔地の患者を診療する「Doctor to Patient (DtoP)」に分類して論じています。テレパソロジーはDtoD型の一例として、実施に必要な条件が定められています。

デジタルパソロジー

デジタルパソロジーは、ガラス標本をデジタル方式で撮影し、病理診断を行う技術です。テレパソロジーはこのデジタルパソロジーに含まれ、デジタルデータ化された病理画像の利便性を提供します。

課題と展望

遠隔病理診断は1990年代初頭から注目され、関連機器の開発が進められてきました。バーチャルスライド撮影装置などの機器は、病理標本を高精度でデジタル化し、リアルタイムで診断に活用することが期待されています。しかし、これらの機器は高額であり、普及には多くの課題が残ります。

最新のバーチャルスライド撮影装置は高性能ですが、視覚的情報量が光学顕微鏡に比べ低下するため、病理診断の現場での活用は限定されています。また、医療施設で病理医不足が引き続き問題視されており、遠隔病理診断を巡る課題とは切り離せない要因となっています。

結論と未来への道

遠隔病理診断の導入が病理医不足を解消する期待もあるものの、その実現には医療体制の整備や病理医育成が不可欠です。現在の制度を見直すことで、病理専門医育成やがん病理診断の標準化が求められています。遠隔病理診断を通じて、今後ますます多くの患者に迅速で正確な診断が提供できるよう、関係者は取り組んでいく必要があります。

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