病理専門医

病理専門医とは

病理専門医は、日本病理学会が認定する、病理診断を専門とする医師の資格です。この資格は、1970年に認定病理医制度として始まり、2002年に現在の専門医制度に組み込まれました。病理専門医は、病気の診断において重要な役割を担っています。

資格取得までの道のり

病理専門医になるためには、以下のステップが必要です。

1. 医学部卒業と医師免許取得: 大学の医学部を卒業し、医師国家試験に合格して医師免許を取得します。
2. 初期臨床研修: 医師免許取得後、2年間の初期臨床研修を修了します。
3. 病理研修: その後、病理研修プログラムに従い、以下の基準を満たす必要があります。
3年以上の病理診断経験
24例以上の病理解剖（主執刀かつ診断報告書作成まで含む。死体解剖資格取得も必須。）
5000件以上の病理診断経験
50件以上の迅速病理診断（術中病理診断）
1000件以上の細胞診経験
人体病理学に関する3編以上の学会発表・論文等の業績（共著も含まれるが、うち1編は筆頭である必要あり。また3編中1編以上は論文が必須。）
診断講習会(病理診断・剖検・細胞診・分子病理)への参加
CPC（臨床病理検討会）を4例以上担当し、報告書を提出
4. 専門医試験: 上記の研修を修了後、日本病理学会が実施する専門医試験に合格することで、病理専門医の資格を取得できます。

研修は、以前は日本病理学会認定施設で行われていましたが、現在では新専門医制度が導入され、日本専門医機構と日本病理学会が認定した基幹病院を中心とした研修病院で実施されています。

近年の変更点

2005年度以降の医師登録者からは、2年間の初期臨床研修が病理専門医試験の受験資格に加えられました。また、2015年度からは研修期間が4年から3年に短縮され、必要剖検数が40例から30例に変更されました。専門医取得後に、指導的立場として追加で10例の剖検を行うことになっています。2018年度からは新専門医制度に移行し、特定の基幹施設のプログラムを修了することが必須となりました。

病理医の役割

かつて病理医は解剖医というイメージが強かったですが、近年では組織や細胞診の検査材料の診断、手術中の迅速病理診断、摘出された臓器の病理診断など、その役割は多岐にわたります。病理医は、顕微鏡などで細胞や組織を観察し、病変の有無、広がり、良性・悪性の区別、組織型などを診断する専門家として、治療方針の決定にも関わっています。

課題と展望

病理診断科が標榜診療科となり、病理診断は医療行為として認められるようになりました。しかし、大学の医学病理学講座は医療機関ではないため、研究と並行して病理診断の修練を積むための制度や環境整備が必要です。大学病院の病理診断科の育成機能強化や、市中病院での病理診断科開設を促進することが、病理医育成には不可欠です。

また、病理診断の多くが外部委託されている現状の改善や、がん診療や病理解剖における病理医の役割を社会に周知し、病理診断の診療報酬の充実、病理医の育成に対する社会的な理解を深める必要があります。

日本の病理医の数は、アメリカと比較して非常に少なく、絶対的に不足していると言われています。病理診断科が十分に普及していないことや、病理診断関連の診療報酬が低いことなどが、若手医師が病理を専門として選択するのを妨げる要因となっています。病理医の専門性を高め、若手医師が病理の道を志すような体制づくりが急務です。

歯科医師の場合

歯科医師の場合には、日本病理学会が認定する口腔病理専門歯科医制度があります。

関連情報

医師／歯科医師
専門医／認定医／臨床医／指導医
病理学（口腔病理学）／解剖学（口腔解剖学）／組織学
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