選定保存技術

選定保存技術について

選定保存技術とは、文化財の保存に欠かせない伝統的な技術や技能のうち、保存措置が必要と認められるものを指します。これらの技術は、文化財そのものではありませんが、文化財の維持・修復に不可欠なため、文化財保護法によって保護されています。

概要

1960年代以降の高度経済成長に伴い、日本の社会構造や生活様式は大きく変化しました。地方から都市への人口移動が加速し、伝統的な技術や文化が失われる危機に瀕しました。このような状況を背景に、1974年に衆議院文教委員会で「文化財保護に関する委員会」が設置され、翌1975年の文化財保護法改正により、選定保存技術の制度が導入されました。

この制度は、有形・無形の文化財だけでなく、その保存に必要な技術も保護対象とすることで、文化財全体の継承を確実にするという重要な役割を担っています。文化庁長官は、選定保存技術を選定し、その技術を保持する個人や団体を認定します。

選定保存技術の制度は、単に古い技術を保存するだけでなく、その技術を現代に活かし、後世に伝えることを目的としています。

選定保存技術の例

選定保存技術には、以下のようなものが含まれます。

規矩術 (近世規矩)：木造建築における寸法や角度を定めるための技術
屋根瓦葺（本瓦葺き）：伝統的な瓦屋根を葺く技術
建具製作：伝統的な木製建具を作る技術
鋳物製作：金属を溶かして型に流し込む技術
檜皮葺・杮葺：檜皮や杮を用いた屋根葺きの技術
浮世絵木版画（彫師摺師）：浮世絵を制作するための彫りと摺りの技術

これらの技術は、文化財の修理や復元に不可欠であり、その技術が失われることは、文化財の保護にとって大きな損失となります。

現状

2018年1月1日時点で、選定保存技術は71件が選定され、56人の保持者と35の保存団体（重複認定があるため実数は32団体）が認定されています。

選定保存技術は、有形文化財、無形文化財のそれぞれの分野に関連する技術、または両分野に関連する技術に分類されます。

選定保存技術保持者の例

上絵具製造
杼製作
手打針製作
烏梅製造
手機製作
蒔絵筆製作
漆濾紙（吉野紙）製作

選定保存技術保存団体の例

竹筬製作 - 日本竹筬技術保存研究会
木炭製造 - 伝統工芸木炭生産技術保存会
縁付金箔製造 - 金沢金箔伝統技術保存会


これらの保持者や団体は、伝統的な技術を継承し、後世に伝えるために日々活動しています。

関連情報

不動産文化財の保存と修復
文化財の保存と修復
文化庁ホームページ - 選定保存技術について
東京文化財研究所

脚注

文化庁『文化財を支える伝統の名匠-選定保存技術「保持者・保存団体」-』（文化庁文化財に関するパンフレット）2018年

参考文献

文化庁『文化財を支える伝統の名匠-選定保存技術「保持者・保存団体」-』（文化庁文化財に関するパンフレット）2018年

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