邇保姫神社

邇保姫神社は、広島県広島市南区西本浦町に位置する神社で、かつては村社として地域の人々に崇敬されていました。旧称は正八幡宮といい、その歴史は古く、神功皇后の時代にまで遡ると伝えられています。

祭神

主祭神は邇保都比売神（にほつひめのかみ）です。この神は、神名から丹生都姫神（にぶつひめのかみ）と同一視されており、この地が古代において朱砂の産地であったことを示唆しています。朱砂は、古くから貴重な顔料や薬として用いられてきた鉱物であり、この地の歴史と深く結びついています。また、邇保姫神社では、帯中津日子神（仲哀天皇）、息長帯日売神（神功皇后）、品陀和氣神（応神天皇）も配祀されており、皇室との繋がりも感じられます。

歴史

社伝によると、神功皇后が三韓征伐からの帰途にこの地に立ち寄り、霊験あらたかな邇保都比売神を祀ったことが神社の始まりとされています。皇后が翌日に出発する際、邪気祓いとして放った矢が現在の神社の鎮座地である山に当たったため、その矢を神体として仁保島（現在の黄金山）の鎮守としたと伝えられています。その後、仁和元年（885年）に宇佐八幡宮を勧請し、正八幡宮と改称されました。

邇保姫神社は、昭和20年（1945年）の広島原爆の際にも大きな被害を受けました。社殿は爆風によって傾きましたが、倒壊を免れました。その後の混乱の中、神社は被爆者の救護所としても利用され、多くの人々を支えました。この出来事から、神社は地域の人々にとって単なる宗教施設ではなく、心の拠り所としての役割も担うようになりました。

平成8年（1996年）10月には、本殿、拝殿、手水舎が広島市の被爆建物リストに登録され、その歴史的価値が認められました。しかし、平成19年（2007年）9月27日未明、不慮の火災により本殿や拝殿などを焼失するという痛ましい出来事が起こりました。焼失した社殿は、建築様式から享保年間に再建されたものと推定され、その消失は、地域の歴史と文化にとって大きな損失となりました。この火災によって、被爆建物リストには手水舎のみが残ることとなりました。

その後、地域の熱意と支援により復興への動きが始まりました。平成20年（2008年）4月には復興造営事業奉賛会が結成され、復興に向けた具体的な活動が開始されました。そして、平成22年（2010年）6月25日には、拝殿の「工匠の儀」（上棟式）が執り行われ、復興に向けた大きな一歩を踏み出しました。同年11月30日には、拝殿が完成し、ご神体を拝殿奥の仮神殿に遷座する遷座祭が執り行われ、長年の復興事業が実を結びました。

邇保姫神社は、過去の災害や火災から復興を遂げ、その歴史を今に伝えています。地域住民の信仰と復興への強い意志によって、この神社はこれからも地域を見守り続けることでしょう。

境内

境内には、焼失を免れた手水舎があり、当時の面影を伝えます。再建された拝殿は、新しいながらも歴史を感じさせる風格を備えています。地域の人々にとって、邇保姫神社は、歴史と信仰の証として、これからも大切な場所であり続けるでしょう。

その他

宮司を務める渡部英麿氏は、元サッカー日本代表選手という異色の経歴を持っています。

外部リンク

邇保姫神社

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