邑 (朝鮮)

邑（ウプ）についての概要

邑（ウプ）は、朝鮮半島における行政区画の一形態であり、時代や地域によって様々な意味合いを持ちます。元々は、朝鮮王朝時代の地方行政の単位として存在し、後に日本統治時代や現代の韓国においてもその形を残しています。

朝鮮王朝時代の邑

朝鮮王朝時代の邑は、主に地方の行政を行う機関が置かれていた地域を指します。具体的には、府尹、都護府使、郡守などの役所が設けられ、これらの役所周辺の集落は邑城として城壁に囲まれていました。多くの場合、これらの邑は数百メートル四方の規模で、人口は約1000人から3000人程度でした。邑の由来にちなんだ地名も多く存在し、邑内里や古邑里などの名称が全国に残っています。

日本統治下の邑

日本が朝鮮を統治した時代に、邑は新たな行政単位として位置づけられました。この時期の邑は、郡の下に位置し、面よりも人口が多い地域を指しました。特に、日本の町に類似した存在であり、邑長という任命された責任者が統率していました。1917年には、面内に人口が多い区域を指定し、そこに日本人の面長が就任する制度が設けられたことが大きな変革の一つです。1930年には邑面制が導入され、邑の法的地位も確立されました。この改正により、当地の発展に伴って次第に邑が増加し、郡から独立した府へと昇格する地区もありました。また、邑内には邑会が設けられ、邑長が議長を務めることで地域の意思決定が行われることになりました。

大韓民国の邑

大韓民国において、邑は基礎自治体の主要な行政単位の一つとなっています。ここでは、郡や市の下に位置し、地方自治団体としての機能を果たしていますが、実際の自治権は持ちません。邑には邑事務所が設置され、邑長がその責任を担っています。韓国における邑の設置基準は、地方自治法によって定められており、人口2万人以上の都市形態や一定の条件を満たした面から成り立っています。韓国のほぼ全ての郡には邑が存在していますが、特例として他の地域が離島である場合は例外的な状況もあります。

沿革

韓国の地方自治法が1949年に施行され、邑は市や面とともに基礎自治体の一部となりました。これに伴い、邑議会が設置されることになり、邑長も邑議会によって選出されるようになりました。しかし、1961年の軍事クーデターが発生すると、地方自治体は縮小され、邑や面は単なる行政区域として扱われるようになりました。その後の1990年代には地方自治法の改正が行われ、これにより再び地域へ邑が設置されるようになったのです。

朝鮮民主主義人民共和国の邑

北朝鮮においては、邑は郡人民委員会が所在する地区を指します。これは日本における町役場に近い役割を果たしますが、朝鮮戦争以降に邑や面の名称が廃止され、現在では郡名を冠した形で呼ばれています。例えば、龍川郡においてはその郡人民委員会が所在する地区を「龍川邑」と表記するのが一般的です。北朝鮮の全ての郡には必ず一つの邑が存在し、郡人民委員会の移転と共にその名称も変更されることがあります。

まとめ

邑は、朝鮮半島において長い歴史を持つ特有の行政区画の一つであり、朝鮮王朝時代から日本統治時代、そして現代に至るまでさまざまな変遷を経ています。邑の形態や役割は時代により変化してきましたが、現在でも地域社会の重要な構成要素として機能しています。

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