那羅延天

那羅延天（ならえんてん）についての解説

那羅延天は、インドのバラモン教やヒンドゥー教に由来し、ヴィシュヌという神が仏教において護法善神として位置付けられた存在です。「那羅延」という名は、ヴィシュヌの別名である「ナーラーヤナ」の音写から来ています。この神は、特に強大な力を持つと考えられ、「勝力」という意味で表現されます。仏教の教義においては、仏や菩薩の強固さを比喩的に「那羅延身」や「那羅延力」と呼ぶことがあります。

那羅延天に関する記述は、『無量寿経』にも見られ、法蔵菩薩（阿弥陀仏となる者）が自らの願いの中で、極楽浄土における求道者に「ナーラーヤナ神が持つような金剛の体」を授けると述べています。これは、那羅延天の持つ力と、その象徴性を深く理解する手助けとなります。

また、『大智度論』では、ヴィシュヌ神が漢訳され「遍悶」と呼ばれています。彼は四本の腕を持ち、宝貝をつかんで輪を持ち、金翅鳥に乗る姿で描かれています。このように、那羅延天やヴィシュヌはその威厳ある姿勢で信仰されることが多いです。

敦煌の仏教壁画などでは、ヒンドゥー教のヴィシュヌと同様に、迦楼羅（ガルダ）に乗っている姿で描かれることが多々あります。このような描写は、神の持つ権威や力を視覚的に表現しています。

特にスリランカにおいては、ヴィシュヌは仏教の守護神とされ、様々な寺院で信仰されています。街の「デワレ」では神々が祀られており、そこにはヴィシュヌを祀るものも含まれます。また、スリランカの寺院の中には、ヴィシュヌ像が設置されている例も見受けられます。これらの像は通常、青い肌で表現され、このカラーは彼の神聖さを象徴しています。

さらに、スリランカの重要な祭りであるペラヘラ祭りでは、ヴィシュヌ神像を載せた象も行列に加わり、神聖な雰囲気を醸し出します。この祭りは、地域の人々にとって重要な文化的・宗教的な意味を持っており、ヴィシュヌの存在感を強調する場となっています。

歴史的な記述もあります。『北史』の隋本紀には、隋朝の建国者である堅の幼少期の名前が「那羅延」と記されており、これは那羅延天を指していると考えられています。仏教を守護する神としての那羅延天は、中国の文化の中でも金剛力士と結びつけられることがあり、強固さと勇敢さを持つ存在として認識されています。

このように、那羅延天は、ヴィシュヌというインドの神から派生した重要な存在であり、仏教に与えた影響や、スリランカでの信仰の形は、多様で興味深いものがあります。無量の力を持つその神は、今もって多くの人々に信じられ、崇拝され続けています。

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