那須雅城

那須雅城（なす がじょう）は、1880年代に香川県高松市で生まれたと推測される日本画家です。没年は不詳ですが、戦前の台湾でその才能を発揮しました。彼は、東京で橋本雅邦に師事し、日本画の基礎を習得した後、台湾に渡り、現地の美術界で重要な役割を果たしました。

那須の画風は、伝統的な日本画の技法をベースにしながらも、台湾の豊かな自然や風景を独自の視点で捉えた点が特徴です。特に、台湾美術展覧会（台展）には複数回出品し、入選を果たしています。

彼の作品は、台湾の山岳風景を題材にしたものが多く、1928年の第2回台展では『高嶺の春』と『深山の秋』が入選しました。翌1929年の第3回台展では、『新高』、『日月潭』、『太魯閣峡』といった台湾を代表する名所を描いた作品が入選し、その描写力が高く評価されました。さらに、1930年の第4回台展では『霊峰春趣』と『幽谷秋情』が入選するなど、台湾の自然に対する深い愛情が感じられます。

興味深いことに、那須は台湾の風景だけでなく、ヨーロッパの山々にも関心を寄せていました。1932年の第6回台展では、『西欧アルブス﹑マッターホルンの図』が入選し、その後もアルプス山脈を描いた作品を台展に出品し続けています。1933年の第7回台展では『アルブス景観』、1934年の第8回台展では『春のアルブス』、そして1936年の第10回台展では『アルプス風景』が入選しており、その画風の幅広さを示しています。

那須雅城は、台湾の美術史において、重要な画家の一人として位置づけられています。彼の作品は、当時の台湾の自然や文化、そして日本との繋がりを今に伝える貴重な資料となっています。

関連情報として、台湾美術展覧会（台展）は、日本統治下の台湾で美術振興のために開催された展覧会であり、多くの才能ある画家を輩出しました。那須雅城もその一人であり、彼の作品は、台湾の美術史を語る上で欠かせない存在です。

もう一度検索