郁久閭庫提

郁久閭庫提（いくきゅうりょ こてい）は、6世紀中頃に存在した柔然の可汗であり、生没年は不詳です。彼は、阿那瓌（あなかい）の死後、混乱期にあった柔然において、短期間ながらも可汗の地位に就きました。

生涯

552年、柔然は突厥（とっけつ）との戦いに敗れ、可汗であった阿那瓌が自殺するという事態に見舞われました。この時、阿那瓌の太子である菴羅辰（あんらしん）、従弟の登注俟利（とうちゅうしり）、そして登注の子である庫提らは、多くの人々を率いて北斉（ほくせい）へと亡命しました。一方、本国に残った柔然の残党は、登注の次男である鉄伐（てつばつ）を新たな可汗として擁立しました。

553年、北斉の文宣帝（ぶんせいてい）は、登注とその子の庫提を柔然へ帰国させました。その頃、鉄伐が契丹（きったん）によって殺害されたため、柔然の人々は登注を可汗として迎えました。しかし、登注もまた、まもなくして部族長である阿富提（あふてい）らによって殺害されてしまいます。これにより、国人たちは庫提を新たな可汗として擁立しました。

しかし、その年、再び突厥からの侵攻を受け、柔然は国を挙げて北斉へと亡命することを余儀なくされました。文宣帝は突厥を討伐した後、柔然を迎え入れましたが、可汗であった庫提を廃位し、阿那瓌の子である菴羅辰を新たな可汗として擁立しました。

このように、郁久閭庫提は、父や兄と共に、突厥や北斉といった周辺国の影響を受けながら、柔然の可汗として短期間その地位にありました。彼の生涯は、当時の北アジアにおける国際関係の複雑さを物語っています。

参考文献

* 『北史』列伝第八十六 蠕蠕

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