郡 (インドネシア)

インドネシアにおける郡は、県や市といった第二級行政区画の下に位置づけられる、第三級行政区画です。国内の大部分の地域では「クチャマタン」という用語が用いられますが、パプア州、西パプア州、ジョグジャカルタ特別州では、それぞれ異なる名称が使われています。

パプア州と西パプア州では「ディストリク」という用語が用いられています。これは、2001年のパプア特別自治州に関する法令によって、従来のクチャマタンに代わって用いられるようになったものです。

ジョグジャカルタ特別州では、さらに複雑な状況が見られます。州内唯一の市であるジョグジャカルタ市内では、郡は「クマントレン」と呼ばれ、その他の県に属する郡は「カパヌウォン」と称されます。この名称変更は、2019年に州知事によって、歴史的な行政区画名称を復活させるために行われました。

インドネシア中央統計庁の2019年のデータによると、国内には合計7,252の郡が存在し、それらはさらに83,820の行政村（農村部におけるデサ、都市部における区/クルラハン）に分割されています。

歴史的背景

オランダ領東インド時代から共和国初期にかけて、郡は「クウェダナアン」という、県の下位区分を指していました。クチャマタンは、そのさらに下位区分として扱われていました。しかし、クウェダナアンが廃止されたことで、クチャマタンが県の直接的な管轄下に入り、郡という扱いを受けるようになりました。

主流メディアである『ジャカルタ・ポスト』、『コンパス』、『テンポ』などは、クチャマタンを指して「郡 (district)」という表現を使用していますが、Google翻訳などの機械翻訳サービスでは、郡と県が誤って取り違えられることがあります。

郡の定義

2014年の法令では、県や市の当局が、行政状況の改善、公共サービスの向上、農村や都市区の権限強化のために郡を設けることができるとされています。郡長はキャリア官僚のポストであり、県知事や市長によって直接任命されます。

インドネシアの大部分の地域では、郡はクチャマタンと呼ばれ、その長はチャマトと称されます。

名称の変遷

前述の通り、オランダ領東インド時代には、郡はクウェダナアンを指しており、クチャマタンは、その下位区分でした。しかし、クウェダナアンの廃止により、クチャマタンが郡として扱われるようになりました。

英語辞書では、「subdistrict」は「district」の下位区分と定義されていますが、クウェダナアンが廃止された現在、クチャマタンを「subdistrict」と翻訳することは正確とは言えません。1982年にインドネシア中央統計庁が発行した出版物では、クチャマタンを「district」と訳しています。

2001年のパプア特別自治州に関する法令によって、パプア州と西パプア州では、クチャマタンに代わって「ディストリク」が用いられることになりました。名称は変わりましたが、郡長は「クバラ・ディストリク」と呼ばれるようになりました。2019年には、ジョグジャカルタ特別州でも、クチャマタンに代わり「カパヌウォン」と「クマントレン」が使用されるようになりました。県の下位区分であるカパヌウォンの長は「パヌウ」と称され、市の下位区分であるクマントレンの長は「マントリ・パモング・プラジャ」と呼ばれます。

このように、インドネシアの郡は、歴史的な変遷や地域の特殊性によって、様々な名称で呼ばれており、その定義も時代とともに変化してきました。地域行政を理解する上で、郡の概念を正確に把握することは非常に重要です。

まとめ

インドネシアの郡は、多様な名称と歴史的背景を持つ行政区画です。クチャマタン、ディストリク、カパヌウォン、クマントレンといった名称の違いは、それぞれの地域の歴史や行政上の変遷を反映しています。この複雑さを理解することで、インドネシアの地方行政構造に対する理解を深めることができます。

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