郡山総合地方卸売市場

郡山総合地方卸売市場は、福島県郡山市に所在する、公設の地方卸売市場です。地域の食料品や花きの流通における重要な拠点としての役割を担っています。

設立の背景と経緯

かつて郡山市には富久山町に地方卸売市場がありましたが、郡山都市圏全体で見ると、市内に3ヶ所、須賀川市に2ヶ所と民間の市場も分散しており、流通の非効率性が課題となっていました。この分散状況により、遠方の仙台市中央卸売市場などを利用する業者も少なくありませんでした。また、旧市場は市街地に近く、市道東部幹線沿いに位置していたため、交通渋滞が利用者の負担となることもありました。これらの問題を解消し、より効率的で広域的な流通体制を構築するため、新たな市場の建設が計画されました。

新市場の整備にあたっては、中央卸売市場としての開設も検討されましたが、国の監督を受けることによる運営の自由度への影響を考慮し、地方卸売市場として整備されることとなりました。しかし、その規模は各地の中央卸売市場に引けを取らないものであり、全国公設地方卸売市場協議会に加盟する市場の中では日本一の規模と称されるほどです。この市場は、郡山市や須賀川市に加え、田村郡を含む周辺およそ30市町村の多様な業者に利用されています。

施設概要

市場は郡山市大槻町に広大な敷地を持ち、機能的な施設を備えています。

所在地: 郡山市大槻町字向原114番地
敷地面積: 約19.6ヘクタール（196,442m²）
建築面積合計: 約3.4ヘクタール（34,532m²） - 水産棟、青果棟、花き棟、バナナ醗酵棟、管理関連店舗などを含む。
延床面積合計: 約4.1ヘクタール（41,312m²）
構造: 鉄骨造、鉄筋コンクリート造
駐車場: 1,516台収容可能

これらの施設は、大量の物資の円滑な受け入れ、保管、取引、出荷を可能にするために設計されています。

取扱品目と取引の状況

郡山総合地方卸売市場では、主に水産物、青果物、花きの3つの品目が取り扱われています。2019年5月1日時点の入場業者数は、水産物部で卸売業者1社と仲卸業者6社、青果部で卸売業者3社と仲卸業者5社、花き部で卸売業者1社と仲卸業者1社となっており、これに加えて14社の関連業者が市場内で事業を展開しています。

平成27年度の実績によると、年間取扱数量は以下の通りです。

青果: 野菜 31,923トン、果実 7,080トン、加工品 296トン
水産物: 鮮魚 4,850トン、冷凍魚 1,732トン、塩干・加工品 7,387トン
花き: 切り花 14,412千本、鉢物 7,619鉢、その他 35千本

これらの数字は、市場が地域における農産物、水産物、花きの供給において、いかに大きな役割を果たしているかを示しています。

一般消費者への開放とイベント

この市場は、原則として業者間の取引の場ですが、一部の施設やイベントは一般の消費者にも開かれています。直接競売に参加することはできませんが、見学者用の展示スペースが設けられており、市場の活動について学ぶことができます。また、市場内に設けられた食堂などの一般向けの店舗は、誰でも自由に利用可能です。さらに、料理教室が開催されたり、『活き活き市場まつり』や毎月第4日曜日に開催される『市場の朝市』といった一般消費者向けのイベントも定期的に実施されており、市場が地域住民にとって身近な存在となるような取り組みが行われています。

沿革

1970年（昭和45年）: 郡山市富久山町久保田に郡山市地方卸売市場が開設される。
1993年（平成5年）: 新市場整備に向け、郡山市および須賀川市の卸売業者らが『県中地区新総合卸売市場整備促進協議会』を設立。
1999年（平成11年）: 新市場の建築工事が着工される。
2001年（平成13年）: 建築物が竣工。郡山市議会にて郡山市総合地方卸売市場条例が可決される。
2002年（平成14年）: 現在の郡山総合地方卸売市場が開場し、業務を開始する。

交通アクセス

自動車を利用する場合、東北自動車道郡山南インターチェンジからおよそ2km、コスモス通りに入ってすぐの場所に位置しており、比較的アクセスしやすい立地です。

郡山総合地方卸売市場は、地域の食生活を支える重要な流通インフラとして、また地域住民との交流の場としても機能しています。

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