部派仏教

部派仏教とは

部派仏教（ぶはぶっきょう、英: Early Buddhist schools）は、釈迦の入滅後、約100年から数百年かけて、初期仏教教団が分裂して成立したさまざまな宗派を指します。アビダルマ仏教とも呼ばれます。部派とは、パーリ語の「Nikāya（ニカーヤ）」に由来し、本来は集団を意味します。仏教においては、戒律や仏典の伝承系統の違いによって分かれた出家者の集団を指します。

紀元前3世紀頃、原始教団は上座部（じょうざぶ、テーラワーダ、theravāda、sthaviravāda）と大衆部（だいしゅぶ、マハーサンギーティカ、mahāsaṃgītika、mahāsāṃghika）に分裂しました。これを根本分裂と呼びます。その後、この二つの部派がさらに分裂を繰り返し、多くの部派が誕生しました。

各部派は、釈迦の教えを研究・整理し、独自の教義（アビダルマ）を構築し、互いに論争を繰り広げました。部派仏教は、釈迦と直弟子時代の初期仏教を継承し、大乗仏教の成立後も、インドで数世紀にわたり大きな勢力を持っていました。後に興った大乗仏教は、これらの部派仏教を「小乗仏教」と呼んで貶めることもありました。

部派仏教の名称

欧米では、部派仏教を「Early Buddhist schools」または、分裂前も含めて「Early Buddhism」と呼ぶことが一般的です。また、「Nikaya Buddhism」という用語も用いられますが、これは1980年にハーバード大学の永富正俊が使い始めたものです。

ポール・ウィリアムズは著書『Mahayana Buddhism the Doctrinal Foundations』の中で、「小乗」（Hīnayāna）の代わりに「主流仏教」（Mainstream Buddhism）という呼称を提唱し、この呼称を用いる学者もいます。

部派仏教の概要

根本分裂は、戒律や教理の解釈の対立が原因とされています。南伝の説では、金銭の布施を受け取るかどうかの「十事問題」が原因とされますが、北伝の説では「大天五事」が原因とされています。その後、部派は分裂を繰り返し、北伝の伝承では上座部系11部派と大衆部系9部派が成立したとされています。

代表的な部派としては、以下のものが挙げられます。

西北インドの説一切有部（せついっさいうぶ）
中西インドの正量部（しょうりょうぶ）
西南インドの上座部（じょうざぶ）
中南方インドの大衆部（だいしゅぶ）

義浄の記録によると、当時、北インドでは説一切有部が圧倒的な勢力を持ち、大衆部もわずかに存在していました。西インドのラータやシンドゥでは正量部が最も多く、南インドでは上座部が主流でした。中央インドのマガダでは4つの部派が存在しましたが、説一切有部が最も有力でした。

大衆部、法蔵部、経量部などの教義は、大乗仏教の教義と共通する点が多く、大乗仏教成立の起源にこれらの部派の教理が影響を与えたと考えられています。

スリランカに伝えられた上座部は「南方上座部」（赤銅鍱部）と呼ばれ、特に大寺派（Mahāvihāravāsin）の学灯に連なる集団は「上座部大寺派」として、ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオスなどの東南アジア諸国で正統説とされ、今日に至っています。

現存する資料

各部派の三蔵（仏典）のうち、現存しているものは以下の通りです。

（各部派の三蔵に関する詳細な情報があれば、ここに追記してください。）

部派の分裂

部派の分裂の様子は、北伝と南伝で若干異なります。以下にそれぞれの系統図を示します。

北伝（20部派）

大衆部
一説部
説出世部
鶏胤部
多聞部
説仮部
制多山部
西山住部
北山住部
上座部
説一切有部
犢子部
法上部
賢冑部
正量部
密林山部
化地部
法蔵部
飲光部
経量部
雪山部

南伝（18部派）

大合誦 (大衆部)（Mahāsaṃgītika）
牛家部（Gokulika）
一説部（Ekabyohāra）
多聞部（Bahussutaka）
説仮部（Paññatti）
制多山部（Cetiya）
上座部（Theravāda）
犢子部（Vajjiputtaka）
法上部（Dhammuttarika）
賢冑部（Bhaddayānika）
六城部（Chandagārika）
正量部（Sammiti）
化地部（Mahiṃsāsaka）
説一切有部（Sabbatthavāda）
飲光部（Kassapika）
説転部（Saṃkantika）
説経部（Suttavāda）
* 法蔵部（Dhammagutta）

部派仏教の研究

部派仏教は、仏教思想の多様性と発展を理解する上で非常に重要な研究テーマです。それぞれの部派の教義や歴史を研究することで、仏教の全体像をより深く捉えることができます。

（参考文献と脚注は、元のテキストを参照してください。）

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