郵便為替

郵便為替とは

郵便為替（Postal Money Order）は、2007年10月1日の郵政民営化以前に、郵便為替法に基づき、日本政府および日本郵政公社が行っていた送金サービスです。民営化後は株式会社ゆうちょ銀行が「為替」という名称で同様のサービスを提供していますが、法制度上は異なるものです。

概要

郵便為替は、「簡易で確実な送金手段を広く公平に提供し、国民の経済活動を円滑にすること」を目的としていました。公社化以前は郵政大臣（総務大臣）が管理する国の事業、公社化後は日本郵政公社が事業を行っていました。

「為替」とは、現金を直接輸送せずに、資金を移動させる仕組みを利用した送金方法のことです。民間金融機関では、全銀システムを「内国為替制度」と称してサービスを提供しています。しかし、全銀システムは預金口座が必要なため、送金者と受取人の双方が口座を保有している必要があります。

一方、郵便為替は、公社が為替証書を発行したり、電信で送金したりするため、送金者・受取人のどちらか、または双方が預金口座を持っていなくても送金が可能です。ただし、公社のみが取り扱う事業のため、必ず郵便局の貯金窓口で手続きを行う必要がありました。

労働基準法では、賃金は原則として現金で支払う必要がありますが、退職手当については、労働者の同意があれば郵便為替による支払いが認められていました。

サービス内容

取扱郵便局

郵便為替は、郵便為替法に基づき、全国のほとんどの郵便局（公社が指定した一部の「為替非取扱い郵便局」を除く）で取り扱われていました。簡易郵便局の中には、農協などに併設されているため、郵便為替業務を扱わないところもありました。

国際郵便為替については、公社が指定した「国際送金取扱郵便局」でのみ手続きが可能でした。

郵便貯金は、CD・ATMで利用できますが、郵便為替は、必ず郵便局の貯金窓口で手続きを行う必要があり、原則として平日9時～16時の利用に限られていました。

印紙税免除と政府保証

郵便為替に関する文書類は、印紙税が免除されていました。また、郵便貯金や郵便振替の預かり金は政府による債務保証がありましたが、郵便為替には政府による債務保証はありませんでした。

有効期間と権利消滅

郵便為替の有効期間は、発行日から6ヶ月でした。有効期間経過後、再交付請求や払戻請求を行わない場合、普通為替・電信為替は3年間、定額小為替は1年間で権利が消滅しました。

かつてあった郵便為替の種類

郵便為替には、普通為替、電信為替、定額小為替の3種類がありました。電信為替には、証書払、居宅払、窓口払の3種類の払渡方法がありました。

普通為替

普通為替は、差出人が指定した金額（1円以上500万円以下）の為替証書を発行するものです。料金（振出手数料）は、送金額に応じて異なり、差出人が負担しました。特殊扱いとして、証書送達や払渡済み通知を請求することもできました。

一般的な利用方法は、以下の通りです。

1. 差出人が郵便局で、為替金と料金を納め、普通為替証書を受け取ります。
2. 差出人は、受取人の氏名を記入し、受取人に普通為替証書を送付します。
3. 受取人は、普通為替証書を郵便局に持参し、為替金を受け取ります。

受取人欄を未記入のまま送付すると、誰でも換金できるため注意が必要です。

電信為替

電信為替は、送金情報を電信で通知することで送金を行う方法です。送金後、払渡方法は証書払、居宅払、窓口払の3種類から選択できました。

証書払

電信為替証書を、受取人の所在地を管轄する郵便局から速達郵便で配達し、受取人が郵便局で換金する方法です。料金は、送金額に応じて異なり、差出人が負担しました。

居宅払

為替金額を、受取人の所在地を管轄する郵便局から現金書留で配達する方法です。受取人は郵便局に出向かなくても現金を受け取れます。料金は送金額に応じて異なり、差出人が負担しました。

窓口払

差出人が指定した郵便局の窓口で、受取人が現金を受け取る方法です。料金は送金額に応じて異なり、差出人が負担しました。


電信為替は、普通為替や定額小為替に比べて料金は高額でしたが、当日中に送金が完了するというメリットがありました。特に居宅払は、郵便局へ行くのが難しい方でも現金を受け取ることができました。しかし、民営化後は廃止されました。

定額小為替

定額小為替は、公社が定めた金額が印刷された証書です。2007年9月28日時点で、7種類の券種があり、料金は一律1枚10円でした。普通為替よりも手数料を安く抑えられるというメリットがありました。

一般的な利用方法は、以下の通りです。

1. 差出人が郵便局で、為替金と料金を納め、定額小為替証書を受け取ります。
2. 差出人は、受取人の氏名を記入し、受取人に定額小為替証書を送付します。
3. 受取人は、定額小為替証書を郵便局に持参し、為替金を受け取ります。

受取人欄を未記入のまま送付すると、誰でも換金できるため注意が必要です。定額小為替は、戸籍謄本請求や応募者全員サービスなど、少額の支払いによく利用されました。

大量発行の場合は、長野貯金事務センターが発行することもありました。

国際郵便為替

国際郵便為替は、「国際送金取扱郵便局」で取り扱われ、原則として東京貯金事務センターで処理されました。相手の所在地に為替証書を送る「通常為替」と、相手の口座に払い込む「払込為替」の2種類がありました。

ゆうちょ銀行の「為替」

2007年10月1日の郵政民営化に伴い、ゆうちょ銀行が「為替」サービスを開始しました。しかし、郵便為替法が廃止されたため、両者は全く異なる制度となっています。ゆうちょ銀行の為替サービスでは、印紙税が課税され、権利消滅までの期間も5年となりました。また、電信為替は廃止されました。

普通為替証書

ゆうちょ銀行の普通為替証書は、以前は1円以上500万円以下で発行できましたが、現在は1枚あたり上限10万円に引き下げられました。料金は、送金額に応じて異なり、手数料も改定されました。

定額小為替

ゆうちょ銀行の定額小為替は、券種が追加され、料金も改定されました。

郵便局巡りと郵便為替

郵便局巡りを趣味とする人の中には、郵便為替を収集する人もいます。普通為替は、局の主務者印、定額小為替は為替日附印が押されるため、収集の対象となっていました。

脚注

注釈

出典

関連項目

郵便貯金
郵便振替

外部リンク

株式会社ゆうちょ銀行
株式会社ゆうちょ銀行 - 普通為替
株式会社ゆうちょ銀行 - 定額小為替
株式会社ゆうちょ銀行 - 2009年1月29日「定額小為替証書の種類の追加について」
株式会社ゆうちょ銀行 - 国際送金
株式会社ゆうちょ銀行 - 郵便為替・郵便振替の送金サービス等のお取扱い

もう一度検索