郷事委員会

郷事委員会について

郷事委員会（きょうじいいんかい）は、香港の新界において原居民が主体の政治的な諮問組織です。香港全域には27の郷事委員会が設置され、これらは共同で新界郷議局を形成しています。この組織は新界における民意を政府に伝える法定機関としての役割を果たしています。

歴史の概観

郷事委員会の起源は、1898年のイギリスによる新界の租借にさかのぼります。当時、イギリスは清朝との間で「展拓香港界址専条」に調印し、99年間の土地の管理権を得ました。この過程で、新界原居民の土地所有権は借地権に変更され、原居民はイギリス国籍を持つことになりました。

郷議局の前身である「新界農工商業研究総会」は1924年に設立され、農地の用途変更に伴う地価の支払いに反対しました。この会は1926年に郷議局に改組され、政府と原居民の関係改善策の一環として、多くの権限が与えられ、村民の福祉を推進する役目を担うようになりました。

1970年代、郷議局は正式に法定諮問機関となり、政府に対して新界の利益を代表する役割を果たすようになりました。1997年の香港返還を迎えると、基本法第40条により新界原居民の伝統的権益が法的に保護されることが明記され、この地域の政治的地位が強化されました。

現在の郷事委員会の構成

新界には現在27の郷事委員会が存在し、これらの委員会は4年ごとに村代表選挙を実施します。選挙の結果、村代表は執行委員会を設置し、そこで主席と副主席を選出します。この選挙制度は2003年に改正され、「双村長制」が導入され、原居民と非原居民の両方が村の代表を選ぶ機会が保障されています。

これにより、村全体の住民は「居民代表」としての議席と、「原居民代表」としての議席を通じて選出されることができ、均等な機会が提供されるようになりました。

政治的立場と影響

新界の原居民は、郷事委員会を中心に「郷事派」と呼ばれる政治勢力を形成しています。この派閥は新界の各行政区において影響力を持ち、区議会でも一定の存在感を示しています。郷事委員会の主席は区議会の議員となるため、特に元朗区や北区、離島区においてその影響力は顕著です。

郷事派は一般的に保守的な立場を取り、返還前は香港政庁や蒋介石政権を支持していました。しかし、返還後は建制派に転じ、政府に対して原居民の特権利益を擁護する姿勢を貫いています。

現任の正副主席

現在の郷事委員会には、各区ごとに正副主席が設定されています。これらの指導者は地域の声を国政に届ける責任を有し、新界原居民のニーズに応える役割を果たしています。

結論

郷事委員会は、新界地域における重要な政治機関であり、原居民の権益を守るための活動を行っています。その背後には長い歴史と複雑な政治的背景が存在しており、今後も地域の発展において重要な役割を果たすことでしょう。

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