郷愁 (三橋美智也の曲)

郷愁（きょうしゅう）

「郷愁」は、日本の歌謡界で一時代を築いた歌手、三橋美智也によって1975年にリリースされた楽曲です。このシングルは、彼の長いキャリアの中でも特定の時期を彩る作品として位置づけられています。

楽曲の背景と制作

本作は、作詞家の横井弘氏と作曲家の平尾昌晃氏という、当時の歌謡界を代表する二人のクリエイターが再びタッグを組んだことでも注目されました。彼らは前年の1974年に発表された楽曲「京都が泣いている」に続いて、この「郷愁」を生み出しています。長年にわたり数々のヒット曲を手掛けてきた両氏が、どのような思いを込めてこの「郷愁」を創作したのか、その制作背景に思いを馳せることができます。

編曲は、多くの歌謡曲や演歌で手腕を発揮した京建輔氏が担当しており、楽曲に深みと情感を与えています。三橋美智也の歌声と、横井、平尾、京という布陣が織りなすサウンドは、当時のリスナーに強い印象を残しました。

メディアでの紹介

この楽曲は、発表された同年にメディアでも積極的に取り上げられました。具体的には、1974年12月9日にはNHKの音楽番組「歌のゴールデンステージ」において、三橋美智也自身によって歌唱・披露されています。テレビを通じて多くの人々に届けられたことで、楽曲の認知度は高まりました。番組でのパフォーマンスは、当時の三橋美智也の歌唱力や表現力を伝える貴重な記録とも言えるでしょう。

シングル盤の内容

シングルレコードとしては、「郷愁」がA面に、そして「鵜の浜小唄」がB面に収められました。両A面という形式ではなく、A面とB面が明確に分けられた一般的なシングル盤の構成です。

B面に収録された「鵜の浜小唄」は、新潟県上越市鵜の浜地域にゆかりのある楽曲であり、地元で歌い継がれている新民謡です。新民謡とは、昭和期以降に地域の文化や情景を題材として新たに創作された民謡風の楽曲を指します。「鵜の浜小唄」もその一つであり、現在もなお地元の人々に親しまれ、地域文化の一部として歌い継がれています。三橋美智也がこのような地域性の強い新民謡をB面に選んだことは、彼の幅広い音楽性や、日本の各地に根ざした歌への敬意を示すものとも解釈できます。

「鵜の浜小唄」の制作クレジットは、作詞が縄克一氏、補作詞が志摩美之氏、作曲が平尾昌晃氏、編曲が京建輔氏となっています。A面の「郷愁」と同じく平尾氏が作曲、京氏が編曲を手掛けている点が共通しており、シングル全体として音楽的な統一感を持たせようとした意図がうかがえます。作詞は異なる人物が担当しており、それぞれの楽曲の世界観が表現されています。

クレジット

シングル盤「郷愁」の収録曲および担当者は以下の通りです。

郷愁
作詞: 横井 弘
作曲: 平尾 昌晃
編曲: 京 建輔

鵜の浜小唄
作詞: 縄 克一
補作詞: 志摩 美之
作曲: 平尾 昌晃
* 編曲: 京 建輔

このシングル「郷愁」は、1970年代半ばにおける三橋美智也の活動の一端を示すとともに、歌謡界における著名なクリエイターたちの仕事、そして地域に根ざした新民謡がどのようにレコードに収録され、広まっていったかを知る上で興味深い資料と言えるでしょう。

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