都会のアリス

都会のアリス

『都会のアリス』（原題：Alice in den Städten）は、1973年に西ドイツで製作された映画で、ヴィム・ヴェンダース監督の作品です。この映画は、ドイツ人のジャーナリストがアメリカでの旅行記執筆中に出会った9歳の少女との心温まる交流を描いており、ロードムービーの一環として位置づけられています。

この作品は、ヴィム・ヴェンダースによる「ロードムービー3部作」の第一作であり、登場人物のフィリップ・ヴィンターに初めて命を与えました。また、日本では2021年11月より「ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ」として劇場公開され、再評価の機会を得ています。

制作背景とスタイル

『都会のアリス』は、即興での撮影スタイルを取り入れ、フランスのヌーヴェルヴァーグの影響が色濃く見受けられます。監督のヴェンダースは、特に小津安二郎の作品から影響を受けたと語っており、作品の随所にその影響が感じられます。興味深いことに、彼はかつて『緋文字』の撮影現場で、キャストが仲良くなる様子を目の当たりにして本作の企画を思いついたと言われています。

ただし、最初の段階でのストーリー構成にはいくつかの問題があり、監督は製作を見合わせることを考えました。しかし、チャック・ベリーの楽曲「メンフィス」からインスパイアを受けるなど、脚本を書き直すことで最終的に作品は完成しました。映画の冒頭4分では、監督自らが特別出演しており、ジュークボックスを流す男の役を務めています。

あらすじ

物語は、アメリカでの旅行記を執筆するため放浪していたドイツ人作家フィリップが、帰国の途中に立ち寄った空港で9歳の少女アリスとその母親に出会うところから始まります。ちょっとした出来事をきっかけに、フィリップはアリスをアムステルダムまで連れて行くことになります。アムステルダムに到着すると、そこで待ち合わせたアリスの母の姿は見当たらず、フィリップは彼女の記憶を頼りに、アリスの祖母の家を探す旅に出ることになります。この旅を通じて、彼らは次第に絆を深め、互いの人生に影響を与え合うことになるのです。

スタッフとキャスト

映画の監督を担当したのは、ヴィム・ヴェンダース。また、本作の製作はヨアヒム・フォン・メンゲルスハオゼンが手掛け、脚本はヴィム・ヴェンダースとファイト・フォン・フェルステンベルクが共同執筆しました。撮影を担当したのはロビー・ミューラーで、音楽はCANというバンドが担当しました。

主なキャストには、フィリップ・ヴィンター役にリュディガー・フォーグラー、アリス役にイェラ・ロットレンダー、アリスの母役にリザ・クロイツァーが名を連ねています。

まとめ

『都会のアリス』は、心温まる人間ドラマと美しい風景描写が絶妙に織り交ぜられた名作です。監督・ヴィム・ヴェンダースの独特の視点が光る作品であり、歴史的な価値も高いと言えるでしょう。

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