都出比呂志

都出 比呂志（つで ひろし）氏は、1942年1月1日に大阪府大阪市で生まれた日本の考古学者です。長年にわたり研究と教育に携わり、大阪大学名誉教授の称号を得ています。

都出氏の学術的な道のりは、1964年に京都大学文学部を卒業したことから始まりました。その後、同大学の大学院文学研究科考古学専攻に進みましたが、博士課程を1968年に中退しています。同年8月からは、京都大学文学部で助手として研究者のキャリアをスタートさせました。1977年には滋賀大学教育学部の助教授に転じ、さらに1979年からは大阪大学文学部で助教授を務めることになります。

大阪大学では研究者として、また教育者として重要な役割を担いました。1988年には文学部の教授に昇任し、1999年からは大学院文学研究科の教授として後進の指導にあたりました。この間、1989年には大阪大学から論文博士として文学博士号を授与されています。2003年に大阪大学を退職し、名誉教授の称号を受けました。

都出氏の考古学研究における最大の功績の一つは、「前方後円墳体制論」を提唱したことにあります。この理論は、初期国家論という枠組みの中で展開され、古墳時代における社会構造や政治権力のあり方を解明しようとするものです。全国的に分布する前方後円墳の築造やその変化を、当時の社会やヤマト王権との関係から捉え直し、古墳時代像をより深く理解するための新たな視座を提供しました。都出氏の研究は、単に遺物や遺跡の検討にとどまらず、古代日本の農耕社会の成立過程、竪穴式石室の地域性、王陵の性格といった多岐にわたるテーマを扱い、そこから古代国家がどのように形成されていったのかを探求しています。

長年の研究活動とその成果は高く評価されており、複数の著名な賞を受賞しています。1989年には浜田青陵賞を受賞しました。また、1997年には著書『雪野山古墳の研究』によって雄山閣考古学特別賞を受賞。2004年には八日市市教育功労賞、そして2018年には第19回和島誠一賞を受賞するなど、その学術的貢献は広く認められています。

都出氏は多くの研究成果を書籍として発表しており、日本考古学における重要な参考文献となっています。単著としては、

『竪穴式石室の地域性の研究』（1986年）
『日本農耕社会の成立過程』（1989年）
『王陵の考古学』（2000年）
『前方後円墳と社会』（2005年）
『古代国家はいつ成立したか』（岩波新書、2011年）
『古墳時代に魅せられて』（阪大リーブル、2018年）

などがあります。特に『日本農耕社会の成立過程』は、古代社会の基盤を農耕の視点から捉え直す画期的な研究として注目されました。また、編集にも多数携わっており、

『古墳時代の王と民衆』（1989年）
『邪馬台国の時代』（1990年）
* 『古代国家はこうして生まれた』（1998年）

といった編著を通じて、様々な研究者との共同作業や特定のテーマに関する論点を提示しています。

学術研究に加え、都出氏は地域の文化財保護活動にも尽力しました。「乙訓の文化遺産を守る会」では前会長を務め、学識経験者として文化遺産の保全と活用に貢献しました。

都出比呂志氏の研究は、古代日本の国家や社会に関する従来の理解に新たな視点をもたらし、特に前方後円墳という考古資料を政治・社会構造と結びつけて論じる手法は、その後の研究に大きな影響を与えています。日本考古学界におけるその功績は計り知れません。

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