都南村

都南村（となんむら）

岩手県中央部に位置し、紫波郡に所属していた都南村は、1992年4月1日に盛岡市へ編入合併され、廃止された村です。

歴史と沿革

都南村は、比較的新しい自治体として誕生しました。その成立は1955年4月1日にさかのぼります。この時、紫波郡内にあった見前（みるまえ）村、乙部（おとべ）村、飯岡（いいおか）村の3村が合併し、新たな村として都南村が発足しました。その後、およそ37年間にわたり存続しましたが、1992年4月1日をもって、隣接する盛岡市に編入されることとなり、自治体としての歴史を終えました。

地理と生活圏

都南村は地理的に盛岡市に近接しており、古くから盛岡市との結びつきが強く、両市村は一体的な生活圏を形成していました。村域内には、盛岡市中央卸売市場、盛岡赤十字病院、岩手県立盛岡工業高等学校など、「盛岡」の名を冠した公共施設が多く立地していました。これは、都南村が盛岡市の都市機能の一部を担っていたことを象徴しています。

行政

村の行政を担う都南村役場は、紫波郡都南村大字津志田第一四地割37-2に置かれていました。盛岡市への編入合併後、この建物は盛岡市役所都南総合支所として引き継がれ、現在もほぼ同じ所在地（盛岡市津志田第一四地割37-2）にあります。合併当初は、道路管理など住民生活に密着した一部の業務が総合支所に残されましたが、現在ではこれらの機能の多くは移管されており、総合支所の役割は主として窓口業務に限られています。ただし、盛岡市教育委員会事務局はこの総合支所内に入居しています。

都南村最後の村長は藤村正雄氏で、1981年2月27日に就任しました。

交通

都南村の交通網としては、以下のものがありました。

鉄道路線: 日本国有鉄道（国鉄）から東日本旅客鉄道（JR東日本）に引き継がれた東北本線が村域を通過し、岩手飯岡駅が設置されていました。
バス路線: 岩手県交通および岩手県北バスが村域内の主要な公共交通機関として運行されていました。

盛岡市との合併とその影響

都南村と盛岡市の合併は、前述のような一体的な生活圏と、村域内に盛岡市の名を冠する多くの公共施設が存在するという背景から、両地域に分散する都市機能を統合・強化することを主要な目的としていました。地元の経済界、特に商工会議所などが合併推進の旗振り役となり、円滑な移行に貢献しました。

合併後の「新市建設計画」において、盛岡市は旧都南村域に対して集中的な公共投資を行いました。これにより、土地区画整理や下水道の整備事業などが大幅に進展しました。また、都南村が長年抱えていた慢性的な水不足問題も、大規模な水源を持つ盛岡市との合併により根本的に解決されました。

一方で、旧都南村域への重点的な投資に対して、従来の盛岡市域の住民から異論や不満が聞かれるケースも存在するという側面もありました。

行政管轄の変遷

合併後も行政上の区画として、警察署の管轄区域は旧村域で独立して扱われる状況が続きました。旧盛岡市域や旧玉山村域が盛岡東・盛岡西の両警察署の管轄であったのに対し、都南村は紫波郡時代から引き継がれ、合併後も長らく紫波警察署の管轄でした。しかし、2016年4月1日をもって、その管轄は盛岡東警察署へ移管されました。

また、都南村は自動車登録に際して、隣接する旧滝沢村と同様に車庫証明の提出が義務付けられていた地域でもありました。

現在は盛岡市の一部として、かつての村域は市の南東部にあたる地域を形成しています。

関連項目

* 岩手県の廃止市町村一覧

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