都市対抗を讃える野球の歌

都市対抗を讃える野球の歌（としたいこうをたたえるやきゅうのうた）は、日本の都市対抗野球大会で使用されていた公式大会歌です。1949年（昭和24年）に、2代目の大会歌として制定されました。作詞は青木薫（あおきかおる）、補作をサトウハチロー、そして作曲は古関裕而（こせきゆうじ）が担当しました。

制定の背景と歴史

1927年（昭和2年）に始まった都市対抗野球大会には、1934年（昭和9年）の第8回大会から「都市対抗野球行進歌」（作詞：小島茂蔵、作曲：古関裕而）という初代の大会歌がありました。しかし、1949年の第20回大会から、大会の主催が従来の単独開催から毎日新聞社と日本社会人野球協会（現在の日本野球連盟）の共同開催体制へと移行したことを記念し、新たな大会歌の制定が企画されました。こうして誕生したのが、この「都市対抗を讃える野球の歌」です。

この「讃える歌」は、制定された1949年の第20回大会から2018年（平成30年）の第89回大会まで、実に70年もの長きにわたり大会のシンボルとして使用されました。具体的には、開会式での出場チームの入場行進の際に演奏されたほか、試合のインターバル時間にも場内放送を通じて流されていました。

代替わりとその後の扱い

大会歌としての役割は、2019年（令和元年）の第90回大会を機に終わりを迎えます。この年以降、都市対抗野球大会では、社会人野球日本選手権大会と共通の新テーマ曲「我街（われら）の誇り」が使用されることになりました。「讃える歌」は公式な場でのメインの使用曲ではなくなりました。

ただし、新テーマ曲への移行後も、地方予選においては引き続き「都市対抗を讃える野球の歌」が演奏されるケースがあるようです。大会全体の顔としての役割は終えましたが、地域予選ではそのメロディーが今も響くことがあります。

作詞者について

作詞者とされる青木薫は、この楽曲が発表された当時、福岡県糟屋郡古賀町（現在の古賀市）に住んでいました。この名前は、昭和初期に「渋田黎明花（しぶたれいめいか）」の筆名で時代小説家として活動した渋田喜久雄（1902年 - 1978年）が、生涯にわたって使い分けた数多くのペンネームの一つだとされています。渋田自身が古賀町役場の広報紙に「梅田健」という別のペンネームで連載していたコラムの最終回で、過去に「ざっと1200篇」もの作品を作詞したことに触れ、その中の一曲として「都市対抗野球大会歌」を挙げたことが知られています。

音源の状況

この楽曲が制定された当初、歌手の伊藤久男（いとうひさお）による歌唱でテスト盤（PR448A）が製造されたことが確認されています。しかし、商業目的やPR目的でのSP盤のプレス頒布が行われた記録は確認されていません。

その後、1969年（昭和44年）に開催された第40回大会に合わせて、日本コロムビアが三鷹淳（みたかじゅん）の歌唱によるシングル盤を製造しています。これは事実上のカバー音源と言えます。

興味深いのは、作曲者が同じ古関裕而である初代の「都市対抗野球行進歌」が、その初期作品という位置づけから『国民的作曲家古関裕而全集』などに代表される形で2000年代以降に複数回CDに収録されているのに対し、実際に大会歌として使用された期間が初代を大きく上回る2代目の「讃える歌」は、長らくCD音源が入手困難な状況でした。初めてCDに収録されたのは、2021年（令和3年）に発売された『古関裕而秘曲集〜プレミアム編』のディスク1、トラック21においてでした。

その他

歌詞は、『都市対抗野球優勝物語』という書籍の巻頭に掲載されています。
関連する楽曲として、1942年（昭和17年）に制定された宮城県塩竈市の塩竈市民歌があります。この市民歌も、「櫻井宏」名義で作詞・作曲が「讃える歌」と同じ作者（渋田喜久雄、古関裕而）であり、毎日新聞社の前身である東京日日新聞が後援していました。

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