都風俗化粧伝

都風俗化粧伝について

『都風俗化粧伝』（みやこふうぞくけわいでん）は、江戸時代における代表的な美容指南書の一つです。この書物は、著者である佐山半七丸によって執筆され、速水春暁斎の美しい挿絵が添えられています。全三巻から成り、1813年から1922年の長きに渡って刊行され、多くの人々に親しまれました。

版元と刊行の歴史

初版の版元は、河南喜兵衛や中川藤四郎、鶴屋金助、秋田屋太右衛門といった京都や江戸、大坂を中心とした出版社であり、これらの企業は当時の流行を敏感に捉え、女性向けの美容関連書籍をいち早く世に送り出しました。著者の佐山半七丸の経歴についてはあまり知られておらず、速水春暁斎と同一人物であるとの説も存在しますが、確証はありません。

書の構成

本書は、以下のような構成で成り立っています。

• - 上巻: 「顔面之部」
• - 中巻: 「手足之部」「髪之部」「化粧之部」
• - 下巻: 「恰好之部」「容儀之部」「身嗜之部」

各巻には、顔の手入れや髪の結い方、化粧の技法などが詳細にわたり記載されており、特に美容や身だしなみに重点を置いています。

従来の美容指南書との違い

『都風俗化粧伝』が特異なのは、これまでの美容関連の書籍が一般的に教訓的な内容に終始していたのに対し、実際的な化粧法について詳しい記述がある点です。この実用性が、多くの女性たちに支持され、特に地方地域の女性たちから強い支持を受けました。具体的な内容は、当時の女性たちの生活や文化を反映しており、京都特有のマナーや風俗も盛り込まれています。

京都文化の影響

この書には、京都文化が色濃く反映されています。帝の都である京都は、当時から洗練された文化と美意識の象徴でした。この地域特有の女性らしさや美しさに対する感覚が『都風俗化粧伝』には表現されており、当時の女性たちが求めた美のあり方を伝えています。

現代における評価

本書は、近年になってその価値が再認識され、平凡社東洋文庫から刊行された活字翻刻版が存在します。高橋雅夫が校注したこの版は、1982年に出版され、より多くの人々が手に取る機会を得ています。『都風俗化粧伝』は、その時代の美容観や民衆文化を知る上で貴重な資料となっており、今日でも研究者や愛好者の間で重宝されています。

終わりに

『都風俗化粧伝』は、単なる美容書にとどまらず、江戸時代の文化や社会を知るための窓口でもあります。その知識と経験が、現代においても女性たちにとって参考になることは間違いありません。このような歴史的な文献を通じて、当時の女性たちの美の追求を感じることができるのです。

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