鄭早苗

鄭 早苗（チョン・チョミョ／ていさなえ）について

鄭早苗は1944年5月に大阪で生まれ、2010年2月4日に肺癌により65歳で逝去した在日コリアン2世の歴史学者です。彼女の専門は古代朝鮮史や日朝関係史であり、教育者として、日本におけるコリアンコミュニティの権利や理解促進にも情熱を注ぎました。

学歴と経歴

鄭は1969年に神戸大学の文学部を卒業し、その後1973年に大阪市立大学大学院文学研究科の修士課程を修了しました。彼女は多岐にわたる社会活動にも従事し、在日外国人有識者会議の委員、京都女性協会の理事、豊中国際交流協会の理事、アジア太平洋人権情報センターの評議員、さらにNPO法人在日コリアン高齢者支援センターサンボラムの理事長としても活躍しました。また、社団法人大阪国際理解教育研究センターの理事長も務め、教育の分野でも大きな役割を果たしました。

彼女は井上秀雄という著名な歴史学者に師事し、研究を深めました。歴史学者としての彼女の貢献は、単なる学問の枠を超え、社会的な貢献へと繋がっていきました。

主な著作

鄭早苗は数多くの著作を残しており、その中には単著、共著、共編著、訳書が含まれています。彼女の代表的な単著には『韓国の歴史と安東権氏』（新幹社、2005年）があります。この本は古代韓国の歴史を掘り下げ、安東権氏の重要性を明らかにする試みとなっています。

また、共著としては、井上秀雄との共著による『韓国・朝鮮を知るための55章』（明石書店、1992年）があり、在日コリアンの人権をテーマにした『ともに生きる社会―在日コリアンの人権を考える』（大阪国際理解教育研究センター、2006年）などがあります。さらに、韓国の歴史を俯瞰するための資料として『図説韓国の歴史』（河出書房新社、1989年）も共編著しました。

彼女はまた、韓国史に関連する書籍の翻訳も行い『韓国史の再検討』（学生社、1974年）や『三国史記』（平凡社、1988年/2006年）など、韓国の歴史文献を日本で紹介する重要な役割を果たしました。

社会的活動

教育者としての顔を持った鄭早苗は、在日韓国・朝鮮人の人権や地域社会の理解促進にも尽力しました。彼女が監修した書籍『新よりよき隣人として―在日韓国・朝鮮人の人権を考える』（KMJ研究センター、1993年）や『きっとわかりあえるよ―在日韓国・朝鮮人問題入門』（KMJ研究センター、1997年）には、多くの人々が理解を深めるための重要な視点が示されています。

更に、彼女の活動は多くの後進に影響を与え、特に在日コリアンの権利や歴史に関する意識の向上に繋がりました。彼女が築いた基盤は、同世代の活動家たちにも受け継がれ、今もなお影響力を持っています。

彼女の遺産

2010年2月4日、鄭は大阪の病院で逝去しましたが、彼女の研究や社会活動は今も多くの人々に受け継がれています。歴史学者としての彼女の業績や人権活動は、在日韓国・朝鮮人にとってだけでなく、日本の社会全体にとっても重要な意味を持ちます。鄭早苗の功績は、今後も多くの研究や活動の指針として語り継がれていくことでしょう。

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