鄭書云

鄭書云（チョン・ソウン）

鄭書云（チョン・ソウン、정서운、1924年 - 2004年2月26日）は、第二次世界大戦中に旧日本軍の「慰安婦」であったと証言した人物です。韓国では、かつて日に平均50人の兵士と性関係を持ったと証言したことから、「挺身隊おばあさん」と呼ばれ広く知られていました。

略歴と証言

彼女自身の証言に基づくと、その生涯は以下のような出来事に彩られていたとされる（「戦争犠牲者を心に刻む会」が1997年にまとめた証言集に詳述されている）。

1924年、朝鮮の田舎で地主の一人娘として生まれました。父親が金属製食器の供出命令を拒否したため逮捕・拷問を受けます。区長から、日本の工場で働けば父親が釈放される可能性があると勧められ、区長に従って釜山へ向かいました。釜山から船で下関へ渡り、そこで同じような境遇の少女たちと共に1ヶ月ほど倉庫に閉じ込められた後、船でインドネシアのスマランへ送られました。

スマランの慰安所では、兵士の相手を強いられました。兵士たちは乱暴で、刀で刺されたり、煙草を押しつけられたりする虐待を受けたと証言しています。あまりに多くの兵士の相手をさせられたため、気絶するほどの苦痛を味わい、軍医に訴えると、恒常的にアヘン注射を打たれるようになったといいます。自殺を考えたこともありましたが、朝鮮人兵士に励まされて耐え抜き、終戦を迎えました。終戦後はシンガポールの収容所で1年ほど帰国を待った後、朝鮮へ帰国しました。しかし、父親は牢獄で死亡し、母親は自殺するという悲劇に見舞われました。自身もアヘン中毒に苦しみ、回復に7年を要したと語っています。

証言活動

1996年頃から、元慰安婦として公の場で証言を始めました。特に、1995年9月に中国で開催された北京女性大会には韓国代表として出席し、その体験を語っています。この大会では、「日本の軍医官から不妊手術を受けた」「金の代わりに軍票を受け取った」「1日平均50人、週末には100人の軍人と性関係を持たなければならなかった」などと具体的に証言し、大きな注目を集めました。

証言への疑義

鄭書云氏の証言内容については、その信憑性に関する指摘もなされています。歴史研究家の秦郁彦氏は、1999年の著作の中で、いくつかの疑問点を提起しています。

彼女は13歳または14歳でインドネシアに連れて行かれ、7年間慰安婦として働かされたと証言しています。これは1937年前後にインドネシアへ渡ったことになります。しかし、史実によれば、彼女が当時インドネシアにいたとする時期（1937年前後）は、同地がまだオランダ領であり、日本軍が組織的に進出していたわけではありませんでした。日本軍がジャワ島スマランを占領し、慰安所を設置するのは1942年以降であり、その時期に彼女がインドネシアにいたとすると、証言時の年齢（1996年に72歳）から計算される当時の年齢（19歳または20歳）と、13歳または14歳で連行されたという証言が矛盾することになります。
また、終戦時に日本軍が慰安婦を生き埋めにしようとした計画を知り、連合軍に通報して阻止したと証言していますが、秦氏は、もしそれが事実であれば、戦後、連合軍から戦犯として処罰されていた可能性が高く、証言の通りとは考えにくいと述べています。

死去

鄭書云氏は、2004年2月26日に80歳で老衰のため死去しました。彼女の生涯とその証言は、旧日本軍の慰安婦問題を巡る議論の中で、その信憑性に対する疑問も含めて語り継がれています。

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