配分

配分（はいぶん）

「配分（はいぶん）」という言葉は、文脈によっていくつかの異なる意味で用いられますが、最も広く使われるのは、何らかの対象を複数の主体や場所、期間などに分け与えたり、割り振ったりする一般的な行為を指す場合です。

一般的な意味（Distribution）

この最も一般的な意味での「配分」は、資源や財産、権利、あるいは役割や責任といった、有形無形様々なものを対象に行われます。特定の基準や目的、あるいは公平性や効率性といった考慮に基づいて、複数の受け手に割り当てる、あるいは分け与える行為を指します。

この意味での「配分」は、「分配（ぶんぱい）」という言葉と非常に近い、あるいはほとんど同義で用いられることがよくあります。しばしば計画性や意図をもって割り振るニュアンスを含むと考えられますが、厳密な使い分けは文脈や分野によります。

社会の様々な場面で「配分」という言葉に出会います。例えば、経済においては、限られた国の予算を各省庁や公共事業にどのように配分する、企業が生産した製品を市場に配分する、あるいは所得を個人間や世帯間でどのように配分（所得再配分）するといった形で議論されます。経済学では、限られた資源を各経済活動にどのように割り振れば最も効率的か、といった「資源配分」の問題が中心的な研究テーマの一つです。所得再配分は、多くの場合、累進課税制度や社会保障制度などを通じて行われます。

組織運営においては、業務や役割を部署や個人に配分したり、時間を会議やプロジェクトに配分したりといった形で使われます。災害時における救援物資の公平な配分なども、この意味での「配分」の重要な例です。このように、一般的な「配分」は、有限なものを複数の対象に適切に分け与えるための、社会的な、あるいは組織的な行為を指します。

ゲーム理論における意味（Imputation）

これとは別に、「配分」という言葉は、数学の一分野であり、複数の意思決定主体（プレイヤー）間の相互作用を分析するゲーム理論において、専門的な概念として用いられます。特に、複数のプレイヤーが協力して共通の目標を達成する協力ゲームの研究において中心的な概念の一つです。

ゲーム理論における「配分（imputation）」とは、協力ゲームにおいて、プレイヤーたちが協力することによって得られた全体の利得（あるいは節約できたコスト）を、それぞれのプレイヤーにどのように分け与えるか、その具体的な分け前を示すベクトルを指します。これは、プレイヤーごとの支払いの組み合わせとして表現されます。

ゲーム理論における「配分」には、単なる分け前ではなく、いくつかの重要な条件が課されるのが通例です。最も一般的な条件は以下の二つです。

個人合理性: どのプレイヤーも、協力に参加しない（単独で行動する）場合に得られる利得以上の利得を受け取る。これは、協力に参加した方が、一人で行動するよりも損をしないことを意味します。
集団合理性: 全プレイヤーが協力した場合に得られる最大の総利得が、その「配分」における全プレイヤーの利得の合計に等しい。これは、協力によって生み出された全体の利得を過不足なく分配することを意味します。

これらの条件を満たす「配分」は、そのゲームにおける協力の結果として考えられる、ある種の「実行可能な」利得分配案であると言えます。

ゲーム理論では、このような「配分」の中でも、特に安定性を持つものに関心が持たれます。その代表例がコアと呼ばれる概念です。コアとは、どのプレイヤーの集まり（提携）にとっても、その集まりだけで行動した場合に得られる利得よりも、提示されている「配分」における自分たちの取り分の合計の方が少なくならない、そのような安定した「配分」の集合のことです。コアに含まれる配分であれば、どの提携もそこから逸脱する動機を持たないと考えられます。

このように、ゲーム理論における「配分」は、協力によって生み出された価値を、数学的な枠組みの中で、合理性や安定性といった基準を用いて分析するための概念です。

まとめ

「配分」という言葉は、社会経済全般で用いられる「分け与える」「割り振る」という広い意味と、ゲーム理論における協力ゲームの利得分配を表す専門的な意味の、主に二つの重要な意味を持ちます。文脈に応じて、これらの意味を理解し分けることが重要ですし、それは経済学や社会学、さらには現代の様々な意思決定問題の分析において不可欠な視点となります。

関連項目: 分配

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