酒寄進一

酒寄 進一：ドイツ文学と児童文学を繋ぐ翻訳家

酒寄進一氏（1958年生まれ）は、日本のドイツ文学研究において重要な役割を担う、ドイツ文学者にして翻訳家です。和光大学表現学部教授として後進の育成にも力を注いでいる酒寄氏は、特に児童文学やファンタジー作品に造詣が深く、数多くのドイツ語小説を日本語に翻訳し、日本の読者に紹介することで知られています。

青年期から培われたドイツ文学への情熱

茨城県出身の酒寄氏は、全寮制高校在学中にドイツ語の学習を始めました。この頃からすでに、J・R・R・トールキン『指輪物語』やH・P・ラヴクラフトの作品に親しみ、豊かな想像力を育んでいたようです。上智大学卒業後、ドイツへ留学し、ケルン大学とミュンスター大学で研鑽を積みました。上智大学独文学専攻博士課程を満期退学後、新潟大学講師を経て、和光大学助教授、そして教授へと昇進。その経歴からも、ドイツ文学研究への並々ならぬ情熱が伺えます。

数々の受賞歴と翻訳作品

酒寄氏の翻訳家としての功績は、数々の受賞歴からも明らかです。1991年には、ジクリト・ホイク『砂漠の宝』の翻訳で第38回産経児童文化賞を受賞。さらに2012年には、フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』の翻訳が、本屋大賞の特別企画「翻訳小説部門」で大賞を受賞するなど、高い評価を得ています。これら以外にも、酒寄氏は多岐にわたるジャンルのドイツ語作品を翻訳しており、その数は膨大です。

翻訳作品リスト：児童文学から本格文学まで

酒寄氏の翻訳作品は、児童文学から本格文学まで、幅広いジャンルに及びます。代表的な作品としては、テレビアニメ『ロミオの青い空』の原作にもなった作品や、グリム童話、ラルフ・イーザウの作品群、そしてフェルディナント・フォン・シーラッハの作品群などが挙げられます。これらは、いずれも高い評価を受けており、日本におけるドイツ文学、特に児童文学の普及に大きく貢献しています。

以下に、酒寄氏が翻訳した主な作品の一部を挙げます（すべてを網羅したリストではありません）。

児童文学・ファンタジー
『月の狩人 アマゾンでみたわたしだけの夢』（ジクリト・ホイク）
『黒い兄弟 ジョルジョの長い旅』（リザ・テツナー）
『砂漠の宝 あるいはサイードの物語』（ジクリト・ホイク）
グリム童話（複数作品）
イリーナ・コルシュノフ作品（複数作品）
ラルフ・イーザウ作品（『ネシャン・サーガ』シリーズ、『盗まれた記憶の博物館』など）
『ファンタージエン』シリーズ（複数作家）

本格文学・ミステリー
フェルディナント・フォン・シーラッハ作品（『犯罪』『罪悪』『コリーニ事件』など）
アンドレアス・グルーバー作品（複数作品）
アンドレアス・フェーア作品（複数作品）
ネレ・ノイハウス作品（複数作品）
その他、多くのドイツ語小説作品

酒寄進一氏の貢献

酒寄進一氏は、単にドイツ語を日本語に翻訳するだけでなく、それぞれの作品が持つ独特の世界観や魅力を丁寧に日本語に伝え、日本の読者にとってより親しみやすく、理解しやすい形に仕上げています。その緻密な翻訳は、多くの読者から高い評価を得ており、日本のドイツ文学研究および翻訳界において、きわめて重要な役割を果たしていると言えるでしょう。 氏の翻訳活動は、これからも日本の読者とドイツ文学を繋ぎ続ける、重要な橋渡しとなるでしょう。

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