酸素の同位体

酸素の同位体

酸素には、3種類の安定同位体（¹⁶O、¹⁷O、¹⁸O）と、14種類の放射性同位体が確認されています。これらの同位体は、原子核内の陽子と中性子の数の違いによって区別されます。

安定同位体の起源

酸素の安定同位体のうち、最も存在比が高いのは¹⁶Oで、天然存在比は99.762%を占めます。¹⁶Oは、恒星内部での核融合反応によって生成されます。具体的には、恒星の中心核で水素が燃焼してヘリウムが生成された後、トリプルアルファ反応によってヘリウムが燃焼し、¹²Cが生成されます。さらに、¹²Cがヘリウム原子核と反応することで、¹⁶Oが合成されます。

¹⁷Oと¹⁸Oは、それぞれ天然存在比が0.037%と0.204%と微量な安定同位体です。¹⁷Oは、恒星のCNOサイクルにおいて、水素がヘリウムへと変換される過程で生成されます。一方、¹⁸Oは、CNOサイクルで生成される¹⁴Nに⁴Heが捕獲されることで生成されます。

放射性同位体

酸素の放射性同位体の中で、最も安定なのは¹⁵Oで、半減期は122.24秒です。次に安定なのは¹⁴Oで、半減期は70.606秒です。他の放射性同位体の半減期は27秒未満であり、そのほとんどが83ミリ秒未満です。これらの放射性同位体は、電子捕獲やベータ崩壊によって別の元素の同位体に変化します。

原子量

原子量の基準は、かつては酸素原子でした。酸素は他の元素と化合物を作りやすい性質があり、相対質量を測定するのに都合がよかったためです。しかし、同位体の存在が明らかになるにつれて、¹⁶O原子を基準とする物理原子量と、同位体の平均相対質量を基準とする化学原子量が存在するようになりました。その後、1961年にIUPACによって、¹²C原子の質量を12とする現在の国際原子量が決定されました。

PET診断と酸素の同位体

¹⁸Oは、PET診断に用いられる18F-FDG（フルオロデオキシグルコース）の重要な原料です。¹⁸Oを含む水（H₂¹⁸O）に陽子を照射すると、放射性同位体である¹⁸Fが生成されます。この¹⁸Fを用いて18F-FDGを合成し、人体に投与することで、グルコース代謝の活発な細胞を特定することができます。

また、¹⁵Oで標識した酸素ガスや水は、脳血流量や酸素代謝量の測定に利用されます。

さらに、¹⁸Oと²Hを同時に用いる二重標識水法によって、ヒトや動物のエネルギー消費量を測定することも可能です。

同位体比測定による気候解明

地球大気中の酸素の安定同位体比は、¹⁶Oが最も多く、次いで¹⁸O、¹⁷Oの順になります。水分子は、わずかに軽い同位体を多く含む傾向があるため、淡水や極氷中の¹⁸Oの存在比は、大気中や海水中の¹⁸Oの存在比よりもわずかに低くなっています。

この同位体比の違いは、水が蒸発したり凍結したりする際の同位体分別効果によるものです。過去の氷床の酸素同位体比を測定することで、過去の気候変動を解析することができます。

まとめ

酸素の同位体は、宇宙での元素合成から、地球の気候変動の解明、医療分野での応用まで、幅広い分野で重要な役割を果たしています。同位体の存在量や原子質量には変動や誤差があるものの、地球上の通常の物質においては、その誤差範囲内に収まります。

酸素同位体一覧

注：#でマークされた値は、一部推定値を含んでいます。
数値の最後のかっこ書きは、その値の誤差を示します。

参考資料

Ame2003 Atomic Mass Evaluation by G. Audi, A.H. Wapstra, C. Thibault, J. Blachot and O. Bersillon in Nuclear Physics A729 (2003).
Atomic weights of the elements. Review 2000 (IUPAC Technical Report). Pure Appl. Chem. Vol. 75, No. 6, pp. 683-800, (2003)
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Audi, Bersillon, Blachot, Wapstra. The Nubase2003 evaluation of nuclear and decay properties, Nuc. Phys. A 729, pp. 3-128 (2003).
National Nuclear Data Center, Brookhaven National Laboratory. Information extracted from the NuDat 2.1 database (retrieved Sept. 2005).
David R. Lide (ed.), Norman E. Holden in CRC Handbook of Chemistry and Physics, 85th Edition, online version. CRC Press. Boca Raton, Florida (2005). Section 11, Table of the Isotopes.

外部リンク

* 酸素同位体温度計 - コトバンク

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