里甲制

里甲制について

里甲制（りこうせい）は、中国の明代から清代にかけて実施された独特の政治制度であり、その構成や機能は時代の変遷と共に変わっていきました。この制度は、主に農業を基盤とした社会組織を確立し、税金の管理や労役の分担を目的としていました。具体的には、110戸の家庭を一つの単位としてグループ化し、その中から裕福な家庭を選び出して里長（りちょう）とし、その他の家庭を甲首戸（こうしゅこ）として、そのグループ内での納税や労役の管理を行わせていました。

制度の背景と成立

この制度の成立に大きな影響を与えたのは明の初代皇帝、朱元璋の施策です。彼は1368年に明を建国し、1381年には全国の住民を管理するために賦役黄冊を作成するように命じました。賦役黄冊は、戸籍簿と租税台帳を組み合わせたもので、民衆を効率的に管理するための基礎資料となりました。

里甲制は、110戸を一つの「里」とし、その中の裕福な1戸を里長として、さらにこの10戸を合わせた11戸を納税や労役の最小単位とすることで構成されました。この11戸の単位により、労役や税金の管理が各グループで行われ、一年ごとに管理の担当が交代し、10年で一巡する仕組みとなっていました。

制度の意義と限界

この制度は朱元璋の重農主義の理想を反映したものであり、農業を通じて社会の安定を図ることを目的としていました。しかし、明中期に入ると、中国における経済が発展し、特に商業の進展が著しくなりました。これにより、土地が郷紳や豪商、富農に集中し、都市への移住が進むことで、農村経済が変革を遂げていったのです。このような大きな社会変動があったため、里甲制は次第に機能しなくなり、1580年には新たに一条鞭法が施行されることになりました。これは税の徴収方法を合理化し、より効率的に財政を管理するための制度でした。

清代における里甲制の変化

清代でも当初は里甲制が採用されていましたが、やがて地丁銀制（ちていぎんせい）に移行しました。地丁銀制は、土地に課税するというよりも、住民一人あたりに銀を課す方式であり、農村の実情に合わせた税制の変更が求められるようになったのです。

まとめ

里甲制は、中国における税務や労役の組織化に大きな影響を与えた制度であり、その成立から変容、最終的な廃止に至る過程は、明・清時代の社会的変動を反映したものと言えるでしょう。この制度によって、農業社会の構造が整備され、税負担の公平化が追求されましたが、経済の発展とともにその限界も顕著になり、新たな制度が必要とされるようになったのです。

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