重イオン

重イオンとは

重イオンとは、リチウム以上の比較的重い原子のイオンを指す言葉です。主に加速器科学の分野で使用され、重イオン加速器によって光速近くまで加速され、重粒子線として様々な研究や応用に利用されています。

重イオンの応用

重イオンは、その特性から多岐にわたる分野で活用されています。代表的なものとしては、以下の2つが挙げられます。

重粒子線がん治療: 炭素イオン線などの重イオン線をがん細胞に照射することで、細胞のDNAに損傷を与え、がんを治療する方法です。従来の放射線治療に比べて、がん細胞に対する殺傷能力が高く、副作用が少ないという利点があります。
RI（放射性同位体）ビーム: 重イオン線をターゲットに照射することで、不安定核であるRIを生成し、これを用いた研究を行う分野です。

炭素イオン線について

重粒子線の一種である炭素イオン線は、炭素原子を加速器で高速に加速したものです。放射線医学総合研究所や兵庫県立粒子線医療センターなどでは、炭素イオン線を用いたがん治療が行われています。

炭素イオン線の特徴

炭素イオン線は、従来のX線治療に比べて、以下のような特徴があります。

DNAへの損傷: X線はDNAに損傷を与えても修復される場合がありますが、炭素イオン線はDNAに致命的な損傷を与えるため、修復が困難です。これにより、がん細胞の分裂を効果的に抑制できます。
細胞周期への効果: 細胞分裂においてDNA合成期にX線は効果が薄れるのに対し、炭素イオン線は細胞周期に左右されず高い効果を発揮します。
酸素欠乏状態への効果: がん細胞がブドウ糖を多く摂取し、酸素不足になった場合、X線やガンマ線の効果が低下しますが、炭素イオン線は直接的に作用するため、このような状態でも効果を発揮します。
正常組織への影響: 炭素イオン線は、がん細胞に集中的にダメージを与えるため、正常組織への影響が比較的少ないという特徴があります。

炭素イオン線治療の課題

炭素イオン線治療は、効果的ながん治療法として期待されていますが、以下のような課題もあります。

適応: すべてのがんに対して有効なわけではなく、適応となるがんの種類や病期が限られています。
治療費: 治療費が高額になる傾向があります。

関連項目

重粒子線がん治療
酸素増感比

参考文献

東嶋 和子著 『放射線利用の基礎知識』 ブルーバックス 平成18年12月20日第1版第1刷発行

外部リンク

重イオン - 原子力百科事典ATOMICA

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